Episode.5 兄

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自分の部屋に荷物を置いて、窓際の椅子に座る。 今日は瀬凪と過ごすつもりだったのに…。 瀬凪、怒ってるかな…? あの時の瀬凪の顔を思い出して悲しくなる。 寂しそうな顔してたなぁ。 そんなことを考えていると、トントンとドアがノックされた。 「和哉。少し話そうよ」 兄さんがそう言って上を指さす。 3階には屋上があるから、そこに行こうってことだろう。 「いいよ」 防寒着を持って、兄さんの後を追う。 兄さんもコートを持っている。 さすが2月。外はとても寒かった。 置いてある椅子に座る。 「何で屋上にしたの」 「好きだからかな」 「寒くない?」 「我慢だよー」 そんなことを話しながら兄さんは俺をじっと見つめてくる。 何?って言おうとすると、ギュッと抱きしめられる。 「和哉〜!またかっこよくなった〜!さすが僕の弟!」 何を言われるのかと思ったら、兄バカを発揮してきた。 「最近どうなの?恋人できた?」 「う、うん。できたよ」 抱きついたまま、そう聞いてくる。 今日はその恋人とデートの予定だったんだよ、兄さん。 「どんな子?てか、さっきの清水くんだったりする?」 「そうだよ」 兄さんのテンションがどんどん上がっていく。 瀬凪自慢だったらいくらでもできるからいいけどね。 「ね、もう番になった?和哉の子供見たいなー!」 …それは言って欲しくなかった。 瀬凪はβだから番う事ができない。 瀬凪がβだからといって俺の気持ちが変わることはないけど。 それをそのまま言うと、兄さんの纏う雰囲気が一瞬変わった気がした。 「β?…そっか。仲良くするんだよー」 ずっと俺に抱きついていた兄さんが離れた時、母さん達が帰ってきた。 久しぶりの母さんの料理は美味しかった。 母さんも父さんも元気だし、仲がいいままで安心した。 まあ、テレビでよく見るからそこまで心配してなかったけどね。
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