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自分の部屋に荷物を置いて、窓際の椅子に座る。
今日は瀬凪と過ごすつもりだったのに…。
瀬凪、怒ってるかな…?
あの時の瀬凪の顔を思い出して悲しくなる。
寂しそうな顔してたなぁ。
そんなことを考えていると、トントンとドアがノックされた。
「和哉。少し話そうよ」
兄さんがそう言って上を指さす。
3階には屋上があるから、そこに行こうってことだろう。
「いいよ」
防寒着を持って、兄さんの後を追う。
兄さんもコートを持っている。
さすが2月。外はとても寒かった。
置いてある椅子に座る。
「何で屋上にしたの」
「好きだからかな」
「寒くない?」
「我慢だよー」
そんなことを話しながら兄さんは俺をじっと見つめてくる。
何?って言おうとすると、ギュッと抱きしめられる。
「和哉〜!またかっこよくなった〜!さすが僕の弟!」
何を言われるのかと思ったら、兄バカを発揮してきた。
「最近どうなの?恋人できた?」
「う、うん。できたよ」
抱きついたまま、そう聞いてくる。
今日はその恋人とデートの予定だったんだよ、兄さん。
「どんな子?てか、さっきの清水くんだったりする?」
「そうだよ」
兄さんのテンションがどんどん上がっていく。
瀬凪自慢だったらいくらでもできるからいいけどね。
「ね、もう番になった?和哉の子供見たいなー!」
…それは言って欲しくなかった。
瀬凪はβだから番う事ができない。
瀬凪がβだからといって俺の気持ちが変わることはないけど。
それをそのまま言うと、兄さんの纏う雰囲気が一瞬変わった気がした。
「β?…そっか。仲良くするんだよー」
ずっと俺に抱きついていた兄さんが離れた時、母さん達が帰ってきた。
久しぶりの母さんの料理は美味しかった。
母さんも父さんも元気だし、仲がいいままで安心した。
まあ、テレビでよく見るからそこまで心配してなかったけどね。
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