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翌日、午後6時。
俺と大ちゃんは有名なチョコレート専門店にチョコを買いに来ていた。
混んでいる店内はは女の子ばっかで、男2人で来ているのなんて俺らだけだった。
ちょこちょこ、男もいるけど。
「どれにしよう。なあ、どれがいいと思う?」
目をキラキラさせてチョコレートを見つめる大ちゃん。
そんなに好きか。じゃあ、誰かにあげるのかと思ってたけど自分用に買うってことか。
「えー、これとか。バレンタイン限定だって」
小さなチョコレートが8粒箱に入っている。
質より量な俺は少なくね?と思う。
しかも、高いし。
めんどくさいからとバイトもせずに親からの仕送りだけで生きている俺には痛い出費だ。
「おお…!美味そう!いいじゃん!それにしよ!俺、買ってくる!」
そんなすぐ決めていいのか?と思ったけど、大ちゃんは元気にレジに走っていった。
並んでるから戻ってくるの遅くなるだろうな。
俺は和哉に買うやつを決めようと店内を見て回る。
不意に肩をトントンと叩かれた。
ビクッとしてしまい、相手のことも驚かせてしまった。
「びっくりした〜。僕だよ。阪宮宏哉」
「あ、宏哉さん…。こんばんは」
宏哉さんはマスクの上からマフラーをして、帽子をかぶり、メガネをつけていた。
変装してても隠しきれない芸能人オーラが漂っている。
目立ってますよ。みんな、くぎ付けになってる。
まあ、いきなり街中でアイドルで遭遇したら誰でもそうなるよな。
「宏哉さんもチョコレート買いに来たんですか?」
「ううん。今日offでブラブラしてたら、清水くん見つけたから声掛けちゃった」
あんまり顔は見えないけど、微笑んだであろう宏哉さん。イケメンだわ。
「あ、そうだ。清水くんに話があるんだ。今、時間あるかな?」
そう言われて、大ちゃんを探す。
宏哉さんの美貌に店員さんも見とれてたのか、全く進んでいなかった。
これなら大丈夫だろ、と思ってコクっと頷く。
「ありがとう。じゃあ、店出よっか。そんな遠くには行かないから」
外に出た宏哉さんは店の目の前で立ち止まる。
そして、くるっと振り返って話し始める。
「単刀直入に言うね。…和哉と別れてくれないかな?」
今の宏哉さんに笑顔はない。
今までの雰囲気をガラッと変えて、言われた言葉は衝撃的なものだった。
少し震えているのは冬の寒さのせいだけじゃない気がした。
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