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その日はふたりで並んで帰った。。
ファンタジー小説の話で会話が盛り上がっていた。
「あのエンディングが素敵でさ、
ふたりが離れていっちゃうんだけど想い合っててね~」
そうだね、とわたしは相づちを打っている。
あの交差点を左に曲がらないと、
そう気づいた瞬間にわたしの足取りが重くなっているのが分かったんだ。
食べ物の匂いがする……。
表情が暗くなっていたのかもしれない、彼女に心配されてしまった。
怪訝そうにわたしの顔を見てくる。
「春っち、大丈夫?」
わたしは慌てて笑顔を作った。
-春っち、と呼ばれていることにはまったく気づかなかった-
あ、ここで曲がるんだよ!
そう話題を切り返して無理やり別れてしまった。
・・・
布団に入ったわたしはある夢を見ていた……。
中学生の自分がお母さんとお父さんと食卓を囲んでいる。
傍らにはなぜかハルカさんもいる。
食卓は海鮮のちらし寿司で彩られていた。
テレビを見ながら、みんなでわいわい会話をしている。
……もう、こんな光景は二度と見られないんだ。
朝起きた時には少し涙が溢れていた。
叔父さんと叔母さんに、おはようございますだけ挨拶して。
すぐに支度して登校したのでした。
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