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もう学校に残っている子どももまばらな時間になった。
「カナデ、カナデ」
僕はいつものように呼びかける。
あれ、どこにいるんだ?
不意に横から飛び出してきて、僕の肩のあたりに抱きついてくる。
「こら、ビックリしたじゃないか!」
文句を言いながらも、僕の顔は笑みを浮かべている。
「元気にしてた?」
答えるように僕の頬に顔を押し付けてくる。
「ひとりで寂しくない? 大丈夫?」
クリっとした眼をこちらに向けキョトンとしている。
そんな顔が可愛すぎて、僕ほ満面の笑みで彼女を抱きしめる。
彼女も気持ちを察したのか、僕の頬にキスをする。
小さな窓から差し込む光は、暖かなオレンジ色。
「もっと一緒に居てあげたいんだけど……こんな場所に隠すようにしてごめんね」
彼女の頭を撫でながら言う。
そんな僕の気持ちに気付いているのかいないのか、腕の中で抱かれながら気持ち良さそうにしている。
優しい時の流れはとても早い。
外からは17時を告げる、街のメロディーが流れてきた。
「もう行かなきゃ。また明日来るよ」
彼女をそっと下ろした。
さっきまで彼女の居た場所から温もりが消え、寂しさが溢れる。
名残惜しみながら、もう一度彼女の頭を撫でる。気持ちよさそうに眼を細めている。
鍵の壊れた体育倉庫。
ここは誰にも内緒の僕と彼女の秘密の場所。
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