骨董屋で出会った不思議な男

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骨董屋で出会った不思議な男

【行きつけの骨董屋】 ============= 彼と出会ったのは街の骨董屋だった。 お洒落で美しい雑貨がたくさん置かれたこの店は俺のお気に入りの場所。 休日に来たのは初めてだが…今日は俺が来た時から店の奥の方にずっと不思議なオーラを纏った中年くらいの男がいた。 すらりと高い背、整った顔立ち…きっとモテただろうな。そんなことを考えながら、特に目当てもなく商品を一つ一つ眺めていた。 小一時間たった頃だろうか、人形用の小さな家具をずっと眺めていたていた彼はランプを見ていた俺に突然話しかけてきた。 「綺麗だねぇ、このランプ。光の感じが暖かくってつい見入ってしまうね。」 急に話しかけられてびっくりする俺にハッとして続けた。 「ああごめん、君ものこのランプが気になるのかと思ってつい話しかけちゃった。」 どこかはかない雰囲気の彼の立ち姿は好意とかそう言うものではないが、なんとなく惹かれるものがあった。 だからだろうか、つい、その言葉に答えたくなってしまった。 「いいですよね。俺もアンティークな雑貨好きなのでこういう雰囲気のよく買っちゃうんですよ。」 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ それから1週間ほど経って休日に骨董屋に向かうとまた例の男にあった。 「おや、君はこの間あったランプの…」 見た目に印象のある彼ならまだしも、こんな特徴のない学生のことを覚えていたと言うのか。 …悪い気はしなかった。 「また会いましたね。よく来られるのですか?」 「まぁね、人形用の家具とか…あっ」 気を良くして答えたかと思うと、男は急に秘密をうっかり喋っちゃった子供のように慌てた。 気になるので話を聞いてみることにした。 「人形?あ、ドール系ですか、球体関節とかの。」 「おや、知ってるのかい?……ん〜つい喋っちゃった。ちょっと恥ずかしくて人には言ってなかったんだけど…実は僕お人形が好きでね、自分でも休日に作るんだけど。日曜大工のお人形版ってとこかな。」 照れ臭そうにわかりやすく男は頭を掻いた。 細くて長い腕。 繊細だけどゴツゴツとした大きな手は確かに何かを作る人らしい雰囲気を醸し出していた。 …でも渋い見た目に反して「お人形」って、ちょっと可愛いな。 74c78c3b-d861-4de5-bc82-2cb794b46359 「あぁ、いや、お人形以外にも色々作るんだけどね!いやぁ〜改めていうと恥ずかしいなぁ。ハハ…」 いけない。なぜかつい見惚れてしまっていた。人形の話だ。 いいじゃないか、俺も趣味を隠してるから気持ちはわかるが… ちっとも恥ずかしいことなんかじゃないと思った。 「へぇ!すごいじゃないですか!!」 「え?」 「俺、人形は作れないけど、実はミニチュアの雑貨を作るが趣味でしてね。最近は服にハマってるんです。参考によく店のショーケースに飾ってある人形の服とかよく眺めちゃうんですよね〜。」 俺は昔から小さいものが大好きでこれまでにいろんな雑貨のミニチュアを作ってきた。最近は服を作るのがマイブームだが、まさか誰かに話す機会がやってくるとは思ってもいなかった。ついテンションが上がってしまった。 それを聞いた男は目を輝かせて俺の話に食いついてきた。 「そうなの!?君も僕と似た趣味を持ってるんだね…!」 … …… 俺は嬉しくなって今まで誰にも話さなかった趣味の話を2回しか会っていないこの男に散々語った。 男も嬉しそうに俺の話を聞いてくれた。意気投合した彼とは数分でとても良い友達となった。 楽しい時間だったが、俺は用事があったことを思い出した。約束の時間が迫っている。 「あ、いけないこの後用事があったんだ。すみません俺はこれで失礼します。今日は有難う御座いました!楽しかったです!!!」 慌てて店を出ようとした時、 「あの!」 男に呼び止められた。 「?」 「名前…まだ聞いてなかった…僕は武田っていうんだ。」 そう言えば話に夢中で名前のことなどすっかり忘れていた。 「おっと、そうでしたね。俺は川越(はじめ)って言います。またお話ししましょう武田さん。」 「有難う!じゃあまた!」 こうして俺と武田さんは運命的(?)な出会いをした。 この頃俺にとって、武田さんがかけがえのない存在になるなど夢にも思っていなかった……
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