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みーちゃんはときどき夢を見ていました。
そこはやや広い空間で、空は黒く、土は白です。土の上には石があります。不揃いな形が3段積み上げられ、あちこちに建っています。
みーちゃん以外は誰もおらず、辺りは耳が痛くなるほど静かです。
何故かみーちゃんの右手には斧が握られています。
あの石は何なのか。
この斧は何なのか。
解らないまま、ただぼんやり立っている夢です。
ーーーーー
みーちゃんは地元の進学校に受かり、高校生になりました。
新生活が始まりました。
みーちゃんには友達ができませんでした。
クラスの子がいじわるというわけではなく、原因はみーちゃんの方にありました。
高校生になった途端、みーちゃんは家族以外の人を恐れるようになったのです。
彼らは他人の悪口を言います。
彼らは自分の悪口を言われると怒ります。
他人の非を扱き下ろします。
自分の非は棚に上げます。
他人の醜さを〝人間としてダメだ〟と言います。
自分の醜さは〝人間だから仕方がない〟と言います。
何て怖い生き物だろう。
みーちゃんには、彼らがバケモノに見えました。
しかし彼らは決してそれだけの人間ではありません。
彼らだって我慢はするし、妥協もするし、人知れず理不尽を飲み込む時もあります。個人にもよりますが、だいたいの人は100の不満のうち、表に出しているのは20か30くらいでしょう。
でも100のうち1さえ漏らさないよう生きてきたみーちゃんの目には、彼らのようにありふれた人間さえも傲慢な怪物に映ったのです。
喫煙室の煙のように外にはエゴと矛盾が充満しています。
呼吸をするたびに感じる息苦しさに、みーちゃんは耐え続けました。お父さんとお母さんと同じように〝自分〟を殺しながら。
みーちゃんは2年生に上がると胃痛を覚えるようになり、教室よりも保健室で過ごす時間が増えました。お母さんとお父さんも胃薬をよく飲んでいたので、胃が弱いのは遺伝なのだろうとみーちゃんは思い込んでいました。
だから、
〝もう自分をいじめるのはやめなさい〟
と、保健室の先生に言われてもポカンとしていました。
3年生になると体調が悪化し、単位を取るだけで精一杯になり、みーちゃんは進学も就職もせず卒業しました。
高校生活の最後までみーちゃんには友達がいませんでした。
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