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この夜、みーちゃんは例の夢を見ました。
黒い空と白い土があって、3段の石が不規則に並び、みーちゃんは斧を持っています。
今夜の夢は、いつもと少し違うことに気づきました。
足元に女が転がっているのです。
女は何度も殴られたのか、顔がぐちゃぐちゃに潰れていて、どこもかしこも血で真っ赤です。
瞬間、みーちゃんはやっと理解しました。
ーーこの女は、〝私〟
女が、自分自身なのだと。
顔は分からないけど、女は自分と同じ髪型をしていました。ペロンとめくれたシャツから腹部が見えています。そこは青く変色していました。
私だ。
彼に殴られた私。
そうか。彼女は私が殺したのね。
みーちゃんは男を責めなかったし、お父さんにもお母さんにも警察にも言いませんでした。
今までのように我慢しました。
逆ギレされたら面倒だから。お父さんとお母さんが悲しむから。警察なんて大袈裟だから。カップルにはよくあることだから。あれ、でもお父さんはお母さんを殴ったことは一度も無いわ。いや、違う。たいしたことないの。たいしたことない骨は折れていない直ぐに治る痛くない痛くない痛くない痛くない痛くない大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫。
呪文のように唱えながら、自分で自分をボッコボコにしたのです。
斧を何度も何度も振り下ろして。
ここは墓地だったのです。
無数の石は墓石で、埋まっている死体は全て自分でした。
幼い頃から殺し続けてきた、みーちゃんの死体たちでした。
ど う す る の?
不意に声が聞こえました。
喋っているのは足元の女でした。
顔のほとんどが崩れていますが、かろうじて口だけは残っていて、そこをぎこちなく動かしています。
どうするの
もうないよ
埋める場所
もう無イよ?
女が止まりました。
今度は土がサラサラと音を立てて動き出し、女の身体を飲み込んでいきます。
埋まっていくソレを見下ろしながら、みーちゃんはいつものように、ぼんやり立っていました。
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