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せっかく車があるのだからと、普段は行かない郊外の大型スーパーまで、足を延ばすことになった。
日曜日の夕方のスーパーはピークを過ぎていて、巨大な建物が、煌々とした明かりで夕暮れに浮かび上がり、不自然な感じがした。
そもそもカートを押す自分の隣に青島がいること自体、妙な気分だった。
そして青島はと言えば、キョロキョロと食材を見ては、楽しそうにしている。
「普段の食事はどうしてるんですか?」
「本当に時間がある時は作る。大概カレーだ。」
「へー。じゃあ今度、そのカレーをご馳走して下さい。」
未来は、そう言って隣の青島を見上げた。
すると青島は、呆れたように眉間にしわを寄せている。
「男相手に、簡単にそんなことを言うもんじゃない。何されても良いと言っているようなもんだぞ。」
そう言って青島は、未来の頭に優しく拳を乗せた。
「そんなんじゃありません。」
顔を真っ赤にして反論する未来に、青島はやれやれと言った様子で首を振った。
普段、買い物をしている所との品揃えは桁違いで、興味のあった調味料なども買えて、未来は満足だった。
レジの先には、デパ地下とまではいかないが、数件のテナントが惣菜を販売しているエリアがあった。駐車場へ向かいながらショーケースを見ていると、おいしそうなポテトサラダが目に入って、思わず足を止めた。
「おいしそうだな。」
後ろで青島が言うのが聞こえた。
「一緒に食べましょうか?」
未来はそう言ってから、軽々しく言ってしまったことをすぐに後悔して、慌てて青島を振り返った。
すると、それを察したのか
「俺は部屋に上がるんじゃない、事務所に行くだけだ。」
と青島は誘いに乗ったのだ。
未来は呆気に取られた。
「そんな屁理屈…。」
ふんっと笑う青島に、未来もおかしくなり、つられて笑った。
家に戻ると
「慌てなくて良い。」
と青島は言って、車から持ってきたノートパソコンを広げた。
未来は誰かのために作る、久しぶりの食事に緊張しながら支度を始めた。
お味噌汁とゴマ和えと焼き魚、それにポテトサラダ。
創太の部屋を出ていく時に、未来自身が少しずつ集めた器たちは持ってきていた。
その不揃いの器に料理を盛り付けると、どうにか形になった。
「ポテトサラダおいしいですね。」
そう未来が言うと
「全部おいしい。」
と青島は言って、満足そうに食べてくれた。
「こんな食卓は、何年ぶりかな。いいもんだな。」
青島がしみじみと言って、穏やかな時間が過ぎる。
「ご馳走さま。本当は片付けくらいしてやりたいが、部屋に入るわけにはいかないからな。」
青島はいたずらっぽく笑って、立ち上がった。
そして見送る未来に一言
「留学生くんも男だぞ。」
と釘を刺して、帰って行った。
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