1人が本棚に入れています
本棚に追加
やがて、T字路にさしかかりました。ここを左に曲がれば、Mさんの家はすぐそこです。
ほっと息をついたMさん。
塀が途切れて、家へと続く道が見えました。
そこで、Mさんはぎょっとしました。
太陽が、これまで塀があった方角に見えたのです。
当たり前ですが影というのは、光の差してくる方向と逆側にできます。
なので、太陽とMさんの間にあった塀にMさんの影が、それも色濃く映るはずはないのです。
そうか。違和感の本当の正体は影だったんだ。
そう思うと同時に、Mさんは背筋に冷たいものが流れるのを感じました。
それから怯える心を奮い立たせ、来た道を少し戻ってみたのですが、塀には影なんて映らなかったそうです。
最初のコメントを投稿しよう!