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言わなかった。
いや…
言う勇気が、僕にはなかったと
言った方が正しいかもしれない。
君を初めて見た時、
胸が高鳴るのを初めて感じた。
君がアイツと付き合うと知った時、
絶望感が僕に襲いかかり、目の前が真っ暗になった。
君がアイツと喧嘩をして泣いていた時、
背中越しに抱きしめればよかった。
「アイツなら大丈夫」
そんなこと…言わなきゃよかった。
僕がこんな風に想っていることを、
君は知らないだろう。
静かに降り出した雨の雫が、満開になったばかりの桜を
したたり流していく。
まるで、君への想いを一滴ずつ心の中から
解放していくかのように。
そして、今日、
君はアイツと同じ姓になる…。
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