99%の私たち

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ホームへ至る階段を下り切るとちょうど電車が滑り込んできた。 「いっちゃん、絶対、結婚しようね。貯金ゼロでも、上杉に負けてもいいからさ」 熱く湿った風がホームを吹き抜け、電車のドアが開いた時、私はそう言って彼の腕に自分の腕を絡めた。いっちゃんはゴールに餓えたストライカーの顔になり、ぎらついた目で私の唇にキスをした。 「負けねーって言ってんだろ」 酔客の介抱をしている駅員も、ベンチで長電話している会社員も、別れを惜しんで抱き合うカップルも、本当は心の底に忘れられない人や叶わなかった恋の痛みを隠している。 私も同じだ。切なくて痛くて、だけど宝石みたいな青い想いをこっそり抱えて、いちばん大切な人と生きていく。何にも気にしないふりで、平然と、楽しく、生きていくのだ。  終 (参考資料) ライフネット生命保険株式会社 〜ライフネット生命、初恋に関する調査〜 https://www.lifenet-seimei.co.jp/shared/pdf/2012-4151.pdf
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