99%の私たち

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「いっちゃん、飲み過ぎだよ」 婚約者のことを私は“いっちゃん”と呼んでいる。上杉のことは“上杉”だ。そして彼らは私のことを“武田”と呼ぶ。幼い頃はお互いに下の名前にちゃんを付けて呼び合っていたのだが、思春期の頃に今の呼び方に変わってしまったのだ。 私たち3人は幼稚園から大学まで、はたまた自動車学校まで、ずっと3人一緒だった。中学と高校は同じサッカー部で、いっちゃんはエースストライカー、上杉はキャプテンでゴールキーパー、私はマネージャーとしてそれなりの活躍をした。 さすがに勤め先は違うが、勤務地は全員同じ新宿区だ。3歳で出会ってから23年が経過しているが、親交は変わらず続いていて、今夜のように3人で食事することが月に1度くらいある。  「飲酒盃(いさはい)、武田、マジで幸せになれよな」 上杉は真剣な目でテーブル越しにこちらを見た。幼稚園の頃から変わらない、綺麗なアーモンド型をした優しく聡明そうな目だ。この眼差しにコロッと落ちた女の子を私は何人も知っている。そう、よくよく知っている。 「うん、ありがと。引越しの荷物が落ち着いたら新居に遊びに来てよ。あ、上杉も彼女できたら今度こそ紹介してね。いつも会わせてくれる前に別れちゃうんだもん」
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