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「奇跡の中の奇跡だってさ。あいつ、賢いくせに勘違い甚だしーな」
上杉が立ち去った方をしばらく眺めていたいっちゃんがぶっきらぼうな口調で言った。
「言ってやりゃー良かったじゃん。初恋の相手は上杉だって」
彼が何を言い出したのか理解できず、私は婚約者の顔をまじまじと見た。彼はサディスティックににやついた。
「バレバレだっつーの。おまえ、俺と付き合うまでは上杉のこと好きだっただろ?俺と付き合ってからは俺にメロメロみたいだけどな」
私は図星を指されて死ぬほど気まずかった。こんな馬鹿にすべて見透されていたなんてショックだ。
「今はいっちゃんが好きだよ」
「知ってるー」
いっちゃんは意地悪く微笑み、上杉がぐしゃぐしゃにした私の髪を不器用な手つきで整えた。私は恥ずかしいやら情けないやら申し訳ないやら肩身が狭いやら、とにかくひどい気持ちでうつむいた。
「武田を責めてるわけじゃねーから。つーか、俺は別に気にしねー。今のおまえが俺を選んでくれさえすりゃ、上杉の古い爪垢くらい、心ん中に大事に持ってても良いんじゃね?」
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