99%の私たち

ある生命保険会社のリサーチによれば、初恋の人と結婚する日本人は100人に1人らしい。そんな雑学を披露すると、上杉はこう言って私たちを祝福した。

「初恋の相手と結婚する確率が1%ってことは、つまりおまえらみたいにお互い初恋同士で入籍するカップルはさらに少ないわけ。奇跡の中の奇跡ってこと。本当おめでと」

仕事終わりに、幼なじみ3人組で待ち合わせた新宿の居酒屋は思っていたより騒々しい。期末試験が終わり、夏休みが始まる時期だからだろうか、安いチェーン店には大学生のグループが多かった。

「ありがと。なんか照れるな」

祝福された私は素直にそう応じたが、隣に座る婚約者は上杉を馬鹿にするようにけらけらと明るく笑った。

「奇跡って言われてもなー。つーか、その数字、本当かよ？そんなに低いの？武田以外との結婚なんて考えたことねーから、そんな特別なことだとは思わねーわ、俺」

来年、私の夫になる男はネクタイの結び目をゆるめ、赤い顔で私の肩を抱き寄せた。彼は飲酒盃(いさはい)という珍しい姓ながらカシスオレンジ1杯で酔っ払うことができる。