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『次のニュースです。本日未明、◯◯市のマンションで女性が血を流して倒れているのが発見されました。』
地方放送局のアナウンサーが深刻な表情で読むニュースに、私はスマホをいじりながら聞き流す程度にしか興味がなかった。しかし、ちらっとテレビを見た途端、視線が引き付けられた。そこに映し出されているのは、見覚えのある景色だったからだ。
ニュースによると、一人暮らしの若い女性が自宅で殺害されたらしい。犯人は捕まっておらず、凶器の刃物も発見されていない。
こういった事件が起きても、どこか他人事にしか感じない私。しかし今回の事件には、不安が込み上げてきた。
最寄り駅まで徒歩20分。築25年のワンルーム。陽当たりが悪く、風通しも悪い。でも隣人の音だけが自由に出入りする。そんなボロアパートに住む私が、毎日通りかかりに見る新築マンション。セキュリティも防音もしっかりしている駅から近いマンションを、毎日、羨ましいと思いながら見上げていた。
マンションの防犯カメラには、住人の出入りに乗じてセキュリティドアを通る男が映っていた。料理のデリバリー:食うバースイーツの 鞄を背負った男が映っていた。しかし、同社では該当する配達の記録は無く、警察は男の特定に急いでいるそうだ。
『しっかり戸締まりをして、怪しい訪問には鍵を開けないように注意してください。』
アナウンサーがそう言って、ニュースを締めくくった。
一人暮らしの若い女性を狙った犯行。見慣れた近所のマンションでの犯行。そして、セキュリティバッチリのマンションで起こった犯行。
私の住むアパートは、防犯カメラもオートロックのセキュリティドアも無い。
不安にかられた私は、通販サイトにアクセスし防犯グッズを購入した。配送予定日は明後日。こんなことなら、追加料金はかかるがプライムに登録しておけばよかったとさえ思った。
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