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直感でわかったのだ。
あってはならないものがそこにある。
それはまるで喉につまった魚の骨や、黒だらけの碁石の中に紛れた白。
はたまた、淡水の池に紛れ混んだ哀れな海水魚のように。
気持ちがわるい。気色がわるい。気分がわるい。
違和感というものはそれに気付いてしまうと排除するまで不快感をもって僕に付きまとう。
それにしても新撰組も舐められたものだ。
尽忠報国のため集った誇り高き武士の隊にまさかこんな不届きものが紛れ込むなど。
いったいどこのどいつだとぎょろりと視線を入ったばかりの新入隊士達の群れへと僕は走らせた。
「どうしたァ総司、腹でも下したみてぇな顔しやがって」
「女が……」
「え、どこ?美人?」
「なんて、冗談です」
僕の言葉にたまたま隣にいた十番隊隊長の原田さんが、その無駄に涼やかな目元を爛々と輝かせて過剰に反応する。
忘れていた、この人は隊内でも無類の女好きとしてその名を轟かせているんだった。
ただでさえ、僕の直感が正しければたぶんはた迷惑な案件が目の前に舞い込んでいるのだ。
その上彼にこの不確かな状況で騒がれなどしたら余計面倒なことになりかねない。
もはや半分本能とも言える危機察知能力で咄嗟に嘘をついた僕は、少し新入りが弛んでるようなので稽古をつけてきますとかなんとか言って彼から距離をとった。
怪しい異分子、さっさと物陰にでも連れ込んで消してしまおう、騒ぎになる前に。
「そうかー、ほどほどにしとけよ総司。お前のしごきはキツイからまーた新入りが逃げかねねぇ」
「一くんや土方さんのそれよりマシだとおもいますがね」
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