ふーん、おもしれぇ女

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声すら中性的だ。男にしては高く、女にしては低く聞こえる。 艶やかな黒髪に、白い肌、線の細い身体、大きな瞳。 間違いない。 一緒に打ち込み稽古してたもう片方の目付きの悪い髪ボサボサの骨男はたぶん、というか絶対に違うが、こちらのまるで女みたいな綺麗な男が男装して新撰組に紛れ込んだ不届きものの女人だろう。 ずいっと、一歩二人に近づきながら僕はにこりと微笑む。 「山崎さん、と言いましたか」 「は、はい」 「失礼ですがその身体、少し改めさせていただきます」 「は!?」 鞘のまま己の刀を構える。 腰を落とし、後ろ足で地面を蹴って瞬時に距離を詰める。 僕の変わり身の早さに至極驚いた顔で、それでも瞬時に切り替えて手持ちの木刀を僕に向かって構えた山崎とやらは、男ならばきっといい隊士に育っただろうと勝手に心の奥底で思う。 残念だ。 だが、剣の天才と謳われる僕からしたらまるで止まっているように遅い。 峰打ちでもして意識飛ばして、その女人と思わしき身体改めさせてもらおう。 「ザキぃ、貸しひとつだからな」 「な、」 がきんっ! だが、大きな音と共に僕の持っていた刀が宙をくるくると舞って地面に呆気なくつき刺さる。 そんな不可思議な現象の下手人は、もはや視界からも意識からも存在を消していた、あの目付きの悪いもう一人の新入りのガリガリ男で。 打ち込み稽古につかっていた木刀を居合い斬りの要領で腰元から切り上げるように一閃鋭くふるって、鞘つきとは言え僕の刀を瞬きも出来ぬ間で素早く横から弾いた。 まさかこの状況で新入りが幹部である僕の邪魔をするなんて思いもしていなくて、周囲への警戒を完全に怠っていたのが悪かったか。 いや、そもそもまず、まだ入隊したばかりのどこの馬の骨とも知らないたかが浪人の剣が、僕の剣速についてこれるのがおかしな話なのだ。 何者だ、この。 「伊織、ちょ、あかんて。沖田さん俺らの上司やて」 「ザキだって木刀構えて応戦しようとしてたじゃないか。それに身体改めるってなんだよ。怖えよ男色かよ職権乱用じゃないか」 「あ、ちょっ、引っ張るな阿呆。仕方ないやろ俺の顔が女にも負けへんくらい可愛らしいのが悪いんや」 「阿呆はどっちだ。奇襲二本目は無理だからな。ほらさっさと逃げるぞ、あちらさんのがどう考えても格上だ」
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