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ぐいっと見た目通りのガサツさで伊織と呼ばれた骨男が、山崎の着物の襟を乱暴に引っ張る。
「ちょ、まっ、脱げてるて伊織、なぁ!恥ずかしい!助平!俺をこんなとこで脱がしてどうする気!」
「どうもしねぇよ馬鹿」
その拍子にべろんと山崎の着物のあわせが乱れて、さすがに女のそれではないと明らかにわかる、まっ平らで、それなりには筋肉もついてる男の胸元がお日様の元に露になった。
「え?あれ、おかしいな」
「へ?」
「女じゃない。てっきり山崎さんは女人かと思ったんですが」
「はぁ?何言ってんだあんた。ザキが女なわけねぇだろ」
僕の言葉に骨男、もとい伊織とやらが山崎の襟を引いたまま酷く怪訝そうな顔をする。
仕方がないので僕が二人を襲ったここに至るまでの事情を説明すれば、ゲラゲラと二人して憚りなく大笑いをはじめるから、僕は不満を表すように少しだけ頬を膨らませた。
「そんな笑わないでくださいよ、僕の勘はいつもはよく当たるんですよ。それに山崎さん随分可愛いらしいお顔していらっしゃいますし……ってあれ、何故伊織さんが面白くなさそうな顔してるのですか」
「……」
「ふふ、俺はこの通り男ですけどその女人とやらの気配、確かにこの辺りからしはったんですか?」
「おいザキ!テメェ!」
「ええ、確かに。でも山崎さんが違うなら僕の勘が狂ったか、もしくはもう逃げられたのかもしれません」
「この場には伊織もおるやないですか」
「さすがに違うでしょう」
不可解な質問に当然のように即答すれば、何故かもうこれ以上は耐えられない、と言った風に膝をついて今度は転げ回るように山崎は笑う。
そんな山崎をこれでもかと遠慮のない力で何故か足蹴にした伊織は酷く不機嫌そうな顔で僕に向き直った。
「……疑いも晴れたし、正直反撃したのは襲われた条件反射みたいなものだから、俺もこの紛らわしい女顔もお咎めなしにしていただけるとありがてぇんすけど沖田隊長」
「ええ、それは勿論。でも貴方も……確か伊織さんでしたっけ?たぶん相当な腕前ですよね。入隊試験の時は特に気付かなかったんですが流派などは」
「か……火事場の馬鹿力ってやつです……流派はえっと……なんか……我流みたいな……」
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