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凛子ちゃんとは、いつもいつも一緒だった。
春は公園の桜の木の下で舞い散る花びらを追いかけて走り回って、夏は庭先のビニールプールでお互いの唇の色が紫色になるほど時間を忘れて遊んで、秋はママ達の手作りのお菓子を持ち寄って二人だけでパーティーをしたり、冬はこたつでミカンを食べながらいつまでもいつまでも話をしていた。
そんな日々は、永遠に続くと思っていた。
だって、私が願ったとおりに物が動いたり、花が咲いたり、風が吹いたり、雨が降ったり、猫や犬を見つけたり―そんなことは誰でもできる、普通のことだと思っていたから。
凛子ちゃんにも出来ることだと思っていたし、パパやママも出来ることなんだと思っていた。
あの日、凛子ちゃんのお家で飼っていた犬のタロウが死んでしまうまで。
タロウが最後に『ありがとう』って言いたいって泣いていたから、だから、タロウの望みが叶うように願った。
『ア…リ…ガ…ト…ウ…』
確かにタロウはそう言って、死んでしまった。
だけど、その時は、凛子ちゃんもおばさんもパニックになった。
そりゃあ、そうだ。
だって、犬がお礼を言ったんだから。
そんなことあり得ない。
白昼夢と済ませるには、あまりにもはっきりと聞こえすぎていて、おばさんは自分が狂ったと思ってしまったくらいだ。
最も、凛子ちゃんは幼稚園児なだけに『タロウがしゃべった!』と、某山の少女のように感動していたんだとか。
その時の私は、『お願い』がおじいちゃんの血を引いてるが故のことだなんて思ってもいなかった。
『明日は晴れるといいな。』とか、『かけっこ、嫌だからなくならないかな。』とか、『お花が咲くといいな。』とかーそんな他愛もない程度のことだから、翌日晴れても、かけっこがなくなっても、花が咲いても、なんら不思議に思わなくても当たり前だ。
すべては偶然でそこに無意識の魔法が介入しているなんて、おじいちゃん以外にわかるはずもなかった。
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