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3.いつか
「高校の同じクラスの子のところで、ミニチュアダックスの子どもが生まれて里親探してるんだけどね、ママに話したら、やっぱりダメって言うんだ。」
凛ちゃんが言った。
「悲しい思いはもう、したくないんだって。ママの言うことも分かるんだけどね。」
そう言って、また、凛ちゃんはため息をついた。
でも、凛ちゃんのママがあれ以来、動物を飼いたがらないのは、タロウのことで離婚寸前になってしまったからだろうと思う。
何も知らなかったとは言うものの、色々と知っている今となっては、幼稚園児の無邪気な願い事の結果であったとしても責任を感じている。
「そんなに飼いたいの?」
私が凛ちゃんに尋ねると、凛ちゃんは小さく頷いて小さな声で言った。
「ママが絶対反対するって分かってたけど、見に行っちゃったんだよね…」
そうしたら、余計に欲しくなっちゃった訳だ。
どんな生き物にしろ、赤ちゃんは可愛いものだし、ましてや、飼っていたこともあるのだから尚更かもしれない。
「どうしても、飼いたい?」
私はもう一度、凛ちゃんに聞いてみた。
凛ちゃんのママが固くなまでに動物を飼いたがらないのは、タロウが死んで悲しい思いをした上に、精神的に不安定になったとされて離婚寸前にまでなったからだろうし、そうなった元をただせば、原因は私にある。
つまり、凛ちゃんが犬を飼えないのは、私のせいなのだ。
でも、今なら、と、思う。
私が魔法使いの孫で、少なからずそういう力があると解っている今なら、凛ちゃん為に願ってもいいのではないだろうか。
もう一度ー
と、その時、不意に強い視線を感じた。
そう感じた方に目を向けると、凛ちゃんの腕の中の仔猫が私をじっと見ているような気がした。
いや、私をみている。
決して気のせいではなく、まだ、開いていないはずのその目で、まるで余計なことをするなと諌めるかのように、私を見つめている。
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