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「飼いたいと思ってるよ。でもね…」
凛ちゃんは呟いた。
「タロウが死んでからしばらくの間、何故かママとパパはいつもケンカしてたことがあったんだ。」
私は息を呑んだ。
凛ちゃんはタロウが最後にしゃべったことは忘れているかもしれないけれど、凛ちゃんのママとパパが離婚寸前にまでなったことは覚えているらしい。
「あの時、もう、パパとママと一緒にいられないかもしれないって思ったんだよね。なんでそうなったのかは、今でも分からないんだけど、タロウが死んでママが少しおかしくなっちゃったらしいっておばあちゃんから聞いたんだけどね。」
そこまで話すと凛ちゃんは少し俯いた。
「仕方ないよね。ママ、タロウのこと、すごくかわいがってたし、そりゃあ、泣くよね。パパもそんなママ、見てるの辛かったと思うし、私も毎日ケンカしてる親なんて見たくないし。」
「ダックス、飼いたいんじゃないの?」
「飼いたいけど、メイちゃんに聞いてもらったら、スッキリしちゃった。」
凛ちゃんは少し笑って言った。
「いいの?」
「私が引き取らなくても、他にもいるみたいだし、だから、今はまだ、なのかなって。」
凛ちゃんは仔猫を抱き上げた。
「ねえ、また、この子に会いに来ていい?」
「うん、もちろん。」
「なーんか不思議な子だよね。すごく癒される。」
「そう?」
「そうだよ。だって、さっきまでメイちゃんとどうやってママを説得するか考えようって思った思ってたんだもの。」
「え~、すごく無理かも。よそ様の事情に口出すなって、ママに怒られるよ。」
私は言った。
「だよね。」
私たちは顔を見合わせて笑った。
いつかー
その時が来たらー
凛ちゃんの願いが叶いますように。
凛ちゃんには、言えないけど。
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