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「なんなら、聞いてやってもいいぞ」
「春樹。ひとつ聞くが、俺の不幸体質を実は楽しんでないか?」
「だって、お前。同情されるの死ぬほど嫌いだろ?」
「同情されるくらいなら、死んだ方がマシだ」
「分からんなー? お前のその複雑な心理」
駅前の賑わいが嘘のように。ひとつ信号を渡って大通りを越えてしまえば、人通りは格段に少なくなる。閑静な住宅街を歩きながら、ケラケラと隣で春樹が笑い声を上げた。
俺一人で百物語がいくつか完成しそうなくらいには、その手の話題には事欠かない。はじめこそ話す度に驚いて、その表情を引き攣らせていた春樹は、いつしか爆笑しながら大半のホラー体験を聞くまでになった。
俺の言うことを冗談のひとつとして、受け流すことを覚えたのか。はたまた、聞かされるうちに耐性がついて、おおらかになったのか。そのどちらが真実かなんて、本人にしか分からない。
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