【 第三幕 】

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今日初めて憑かれたのであれば、もっと右往左往している。 蒼波の心の声を代弁するなら『ああ、またかよ。鬱陶しいな』という具合で、ほとんど間違っていないはずだ。 勝手な憶測だが。怪異への対応に慣れきっていたところを見ても。両手では下らない数、蒼波は余裕で憑かれている。 追い払い方には、各々の個性が出る。律儀な彼のことだ、もしかすると長々と話を聞いてやっているのではないか。 「いえ。違います」 「違う?」 咲月の予想とは正反対に、蒼波は首を左右に振った。どちらも違う。否定の意を示した彼の反応に、戸惑うのは此方の番だった。ぱちりと瞬きをして、一般人でも可能な他の手段を考える。 まさかと思うが、憑かれる度にお祓いにでも行っているとでも云うのか。それはそれで、面倒臭すぎる。
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