◇ 第壱話:匣ノ怪 ◇ 

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「で? 朝からなんで魂抜けた顔してるワケ?」 「……そんなにか?」 「コーヒーくらいなら。奢ってやらんこともないと思うほど」 「……朝っぱらから、見事な飛び込みだった」 「それは? それとも?」 「」 「そりゃあ、ご愁傷サマ。大学着いたら、奢ってやるよ」 「ブラックで頼む」  うっすらと雲のかかった空は、曇ってはいるが雨は降りそうにはない。しかし、俺の心中は正反対もいいところで、今にも大雨が降り出しそうなほど、分厚い暗雲が垂れ込めていた。  朝、家を出た時には晴れ晴れとしていたはずなのだが。いったい何処でどう間違ったのか。口を開けば出るのは溜息ばかりで、思わず閉目して握った拳で額を叩く。
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