◇ 第壱話:匣ノ怪 ◇ 

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 どちらにせよ。笑い飛ばすのが、ここでは正しい反応だ。下手にされる同情は、こちらが余計な怪我をして終わる。相手が信じていない現実をわざわざ突きつけられるくらいなら、いっそのこと嘘だと全否定される方が良い。 「……昨日。俺の家の最寄りで、人身事故あったの知ってるか?」 「あったな。電車止まってたし」 「死人といえども。目の前でド派手に飛び込まれて、スプラッタな現場を見せつけられたら、誰だって気が滅入るだろ?年齢制限モンだぞ、アレは」 「……うっげぇ」  もう一度言っておくが、生きた人間では無い。  俺の目の前で飛び込んだのは、昨日だ。
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