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「あ、あんまり見ないで。恥ずかしいから」
来夢が止めようとするけど、ぼくは気になって「いいから見せてよ」と言って半ば強引に問題集のページをめくった。
「…!!」
ぼくは思わず息を飲んだ。
問題集にはただ答えが書いてあるだけでなく、事細かに解法が書いてあった。
それだけでなく、問題の内容に対する考えや推察なども書かれていた。
…ただ漠然と公式を覚え、問題を機械的に解いていたぼくとはまったく違う勉強法だった。
来夢はまったく努力しないで満点を取っていたのだと思ってた。
だけど違った。
きっと来夢は誰よりも努力したのだ。
だからテストではいつも満点を取っていたのだ。
「南野、くん…?」
来夢の声で我に返る。
そしてぼくの口は無意識に言葉を発していた。
「北大路、ぼくに勉強を教えてくれないか?」
それからぼくは塾も家庭教師もやめた。
父さんと母さんは凄く怒っていたけど「次は1位取るから、必ず」と言うとなんとか怒りを収めてくれた。
そして学校が終わるとバス停で待ち合わせしほぼ毎日、北大路来夢の家に通った。
来夢はぼくに勉強を教えるのでなく、一緒に勉強しよう?と言ってきた。
それでもいいとぼくは言った。
来夢と勉強すれば、ぼくはまったく違う次元に行けると確信したからだ。
来夢のおじさんはぼくが家に入ると遊びに来たと思ってとても喜んでいた。
ボーイフレンドの一人ぐらいいてもおかしくない年頃なのに勉強ばかりして、ウチの来夢も女の子らしいところがあるんだな~と感動していた。
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