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「本当はわたしがお医者さんになって、その病気の特効薬を作りたかった…。お母さんや友達の死を無駄にしたくなかったから」
話が頭に入ってこない。
来夢が病気…?
全然そんなふうに見えないじゃないか…。
「でもね、ダメだった。わたし…高校生になるまで生きられないんだって…ううん、もしかしたら来月には……」
「そんなバカな!こんなに…こんなに元気じゃないか…!!」
ぼくは、どうしても信じられなかった。
「けっこう辛かったんだ…。本当は来人くんと、毎日でも勉強したかった…でも身体が言うことをきいてくれなくて…痛くて休まなきゃ、来人くんと一緒に勉強できなかったの」
それで来夢は週に2回は休ませてくれと言っていたのか…!
ぼくは自分の勘の鈍さを呪った。
好きな子がこんなに苦しんでいるのに、それに気付かないなんて…!
「なんとか…ならないのか…?」
「一つだけ方法があるの」
「なんだよ、それは」
「わたしね、期末テスト終わったらアメリカで冷凍カプセルに入ろうと思ってる」
冷凍カプセル…?
この間の国語のテストの最後に出た問題…。
冷凍カプセルで自分自身を冷凍して、宇宙を旅行する男の話か…!!
「そんなことが…現実的に可能なのか…?」
「うん、人間を冷凍保存することは今の時代の技術でも出来るよ。でも…そこから回復させる方法がないの」
「じゃあどうするんだよ…!」
「だからね…」
「来人くんに、わたしの病気の治療法と冷凍から回復させる方法を探してほしいの」
それは、来夢にとって告白に近い心境だっだだろう。額からは汗がじんわり滲み、目は潤み、小さな身体はかたかたと震えていた。
「来人くんしかいないと思った…。名前も似てるし、おはなししててとっても楽しいし……運命だと思ったよ。きっと神様が、がんばって勉強してきたわたしにプレゼントをくれたんだと思ったの…。」
断られたらどうしよう、という思いがあったのかもしれない。来夢の目にはこぼれそうなほどの涙の粒が溜まっている。
…ぼくの答えは、北大路来夢に出会った時から決まっている。
「ああ…わかった。ぼくが…きっと来夢を助けてみせる…!!だから…それまでは絶対に死ぬな!約束だ!」
来夢の手を取って、強引に指切りさせた。
来夢はぼろぼろに泣きながら微笑んだ。
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