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期末テスト当日。
ぼくはいつも通り来夢と挨拶をかわすと、それぞれの教室に入った。
テスト開始のチャイムが鳴り、始まる。
ぼくはシャープペンシルを手に取る。
見える景色がまるで違った。
問題の答えが、映像のように頭の中に流れ込んで来るのだ。
…来夢も、きっと同じビジョンを見ていたんだ。
ぼくはシャープペンシルを置いた。
一教科10分も掛かっていない。
簡単すぎる。
来夢のおかげだな。
間違いなく全教科満点だろう。
5限目が終わり、教室を出る。
来夢もほとんど同じタイミングで出てくる。
二人で一緒に帰った。
ぼくの家とは反対方向だったが、送っていくと言ったのだ。
帰りに昨日の公園に寄って、ベンチに座った。
「…いつ、アメリカに行くんだ?」
「明日」
「…酷いのか」
「うん、痛いけど…来人くんといれば平気」
「来夢、必ず…助けるから。何年掛かっても…だから、待っててくれ」
「来人くん…」
来夢はおもむろに立ち上がると、ぼくの前に立った。
そして少し背伸びすると、ぼくの唇にキスをした。
「わたし、がんばるね…!来人くんが、わたしを起こしてくれる王子様になってくれるから」
「来夢…」
「…大好きだよ、来人くん」
そして、来夢はアメリカへと旅立った。
…永遠のような、刹那の別れだった。
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