魔王と勇者(まおうとゆうしゃ)

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あれからさらに数年(すうねん)()った。 あの勇者(ゆうしゃ)は10(ねん)(あいだ)()(しろ)()ることは()かった。 普通(ふつう)ならば(あきら)めたと(おも)うだろうが、(われ)はそうは(おもわ)わなかった。 あの勇者(ゆうしゃ)(かなら)()る。より(つよ)く、修行(しゅぎょう)()んで。 そう(しん)じてさえいた。 「魔王様(まおうさま)!あの勇者(ゆうしゃ)です!」 「また()たか…」 (われ)(ひさ)しぶりに(こころ)(おど)った。 万全(ばんぜん)準備(じゅんび)(ととの)え、勇者(ゆうしゃ)(むか)えた。 「魔王(まおう)!」 「よかろう、相手をしてやる」 (われ)勇者(ゆうしゃ)(たたか)った。 「ふはは、(よわ)い、(よわ)すぎるぞ」 「く、くそう…」 勇者(ゆうしゃ)はたおれた。 …(うご)きが()ちたな。 魔法(まほう)はそこそこだが、剣技(けんぎ)()れも()ちたように(かん)じた。 なんてことだ! 勇者(ゆうしゃ)はこの10(ねん)、サボっていたのか!? 10(ねん)()っていたと()うのに! (われ)心底(しんそこ)(いか)(くる)いそうであったが、ガーゴイルは()()いて(かた)った。 「魔王様(まおうさま)…どうやらあの勇者(ゆうしゃ)(とし)のようです」 「なんだと?」 「(わたし)調(しら)べによりますと、(はじ)めて魔王様(まおうさま)出会(であ)った(とき)勇者(ゆうしゃ)は35(さい)でした。それから12年、現在(げんざい)は47(さい)一般的(いっぱんてき)人間(にんげん)としては体力(たいりょく)()ちていく年頃(としごろ)になります」 「バカな…もはやそのような年頃(としごろ)だったというのか……」 たしかに、勇者(ゆうしゃ)面構(つらがま)えをよく()るとなかなか精悍(せいかん)(かお)つきであるが初老(しょろう)のように()えなくもない。 この勇者(ゆうしゃ)も…(ほか)勇者(ゆうしゃ)(おな)じように、年齢(ねんれい)によってその(みち)()ざされてしまう運命(うんめい)にあったのだ。
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