15人が本棚に入れています
本棚に追加
勇者と魔王（ゆうしゃとまおう）
勇者35歳ーーーー
「ハロルド！！いつまで寝てるんだい！」
おふくろの声で起きた。
なんだ、もう昼か…。
俺はハロルド。
昼起きてゲーム、夜飯を食ってゲーム、そして朝に寝る。いわゆるニートというやつだ。
ゲームの中じゃ、俺は無敵だ。
ドラゴンや魔王でさえ、課金厨の俺の前じゃ雑魚同然。
今日もおふくろのサイフからくすねた1000ゴールドを課金する。
「ちくしょう！またカスレアかよ！人権レアの魔王姫シュバリエたんまで、あと1回ガチャ回せば手に入るのに…」
ロリ姫シュバリエたんのためなら、1000ゴールドなんて惜しくない！
俺はおふくろのサイフからもう1000ゴールドいただくことにした。
…だが、ついにおふくろにバレてしまった。
「ハロルド！！最近サイフからお金がなくなると思ったら、お前のしわざだったのかい！！」
「う、うるせー！ちょっと借りただけだっつーの！いつか返すから…」
「そんなこと言って…！あんた就職もしないでゲームばかりやってるじゃないか！！いつになったら就職するんだい！！お隣さんのヨシュアくんは国王正規軍の副司令官まで昇進してるのに…まったくあんたって子は……くどくど」
始まった。
おふくろの説教だ。
だいたい1時間くらい聞き流せば終わる。
…またイベント出れねえじゃねえか。
だいたいヨシュアなんて学校の時から魔法も剣技も天才だったじゃねーか。
そんなヤツと一般人以下の俺と比べられても、ね…。
だがその日のおふくろの説教はいつになく長かった。たぶん金くすねてたのが相当ショックだったらしい。泣きながら説教し続けた。
「あんたには、勇者さまの爪の垢を飲ませてやりたいよ…！」
出た出た、おふくろの勇者さま。
だいたい、勇者なんて魔王に負けたじゃねーか。
なんでそんなやつの爪の垢を飲まなきゃならねーんだ。
面白くねえ。
まだおふくろの説教は続く。
「わあったよ！明日から仕事探すから、泣くなや！」
あんまりにもうるさいので、ついカッとなって見栄きっちまった。
ちっ、しかたねえ。
明日からバイトでも始めて金返すか…。
俺はバイト誌のページをめくった。
最初のコメントを投稿しよう！