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だが現実はそんなにあまくなかった。
雑用係の仕事はハードだ。
みんなより早く起きて飯を作って、みんなが食べおわったら片付けて、怪我をした兵士がいたら介護してやって、また飯を作って、片付けて…掃除して、飯作って…片付けて…。
とてもじゃないけど、ブラックなバイトだった。
やってらんねーよ。まじで。
明日辞めるか…。
こんなふざけたバイトなら、やらねーでおふくろの説教聞いてたほうがマシだ。
…そう思っていたところ、事件は起きた。
「大変だぁーっ!正規軍が全滅したぞーっっ!!」
「はっ…!?」
どうやら、前線で戦っていた正規軍が魔王が現れたことにより全滅したらしい。
後方待機部隊も、すでにモンスターに囲まれていた。
後方待機部隊は、その名の通り正規軍の撤退援護などを主な仕事とする。
つまり、そこまで戦闘に優れたやつはいないのだ…。
そんな連中が魔王直属のモンスターたちと戦っても勝てるはずなんかなかった。
次第にやられていく仲間。
あと残ったのは、同じ雑用係の女…ミントしかいない。
そのミントも、俺も、恐怖でへたりこんでいた。
「貴様らで最後だ」
ガーゴイルがそう言った。
俺とミントはもうダメだ、と思った。
あ…ちびった。
「やめよ」
その時、凜としたいい声が聞こえた。
女にしては妙に低い声だが、聞き惚れてしまうほどのいい声だった。
「しかし魔王様…」
「よい。そのような者をたおしたところで、意味は無い。無益な争いは避けるのだ」
「はっ」
そして魔王と呼ばれた少女とその配下のモンスターたちは去っていった。
「あれが魔王…」
俺は確かに見た。
魔王は、俺がガチャで当てられなかった人権レア…シュバリエたんにそっくりだったことを…。
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