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「おお!久しぶりじゃねーか!ハロルド!」
数年ぶりに魔王城の4階に来た。
ミナセユキトーンはまだ中ボスとしてそのフロアにいるようだった。
白髪まじりの私とは違い、ミナセユキトーンはあの頃からまったく変わっていない。
魔族は最低でも1000年は寿命があると言われている。ミナセユキトーンもその例に漏れないのだ。
「ああ。元気そうだな」
「まあな。…また魔王様と戦うのか?」
「ああ」
「そうか…。なあ、ハロルド」
「なんだ?」
「俺も、一緒に連れてってくれねーか?」
意外な申し出だった。
「どうした?急に」
「いや、お前を見てると…少し羨ましくなった。最初は弱っちかったのによ、守るもんができた途端…俺じゃ遠く及ばねえくらい強くなっちまって。…正直、武人として…お前に惚れちまった」
「ミナセユキトーン…」
「だから俺も連れてってくれよ!お前ほどじゃねーけど、そこそこ強えぞ俺は!」
「駄目だ」
「なんで!?」
「………」
「なんで連れてってくれねーんだよ!?俺だって、お前と一緒に戦いてえっ!なんで俺じゃ駄目なんだよ…!!?」
「…私は、魔王には勝てないからだ」
「だったらなおさら一人じゃ戦えねえじゃねえか!?なあ、ハロルドよ!?」
「だがな、ミナセユキトーン。私には息子がいる…」
「…!!」
「私では魔王に勝てないだろうが、魔王に挑戦し続ける限り…その背中を見て育った息子は必ず後に続き魔王に挑むことになるだろう。そしてその時…お前が息子の助けになってほしいのだ」
「俺が…!?」
「そうだ。だから、お前は連れていけない。こんなことを頼めるのは…共に剣を合わせたお前しかいないのでな」
「ハロルド…」
「息子を、頼んだぞ」
そして私は4階の扉を開けた。
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