勇者と魔王(ゆうしゃとまおう)

19/21

15人が本棚に入れています
本棚に追加
/78ページ
勇者(ゆうしゃ)73(さい)ーーーーー あれからもわしの挑戦(ちょうせん)(つづ)いた。 …もはや()(けん)魔王(まおう)にかすりすらしない。 ()いていく身体(からだ)が…(けん)()てよと悲鳴(ひめい)()げている。 (とし)(かさ)ねるごとに、()ちていく(ちから)(くる)しくなる、呼吸(こきゅう)。 もはや気勢(きぜい)だけで魔王(まおう)(いど)んでいるだけであった。 …しかし、それもどうやらここが終着点(しゅうちゃくてん)のようだ。 「勇者(ゆうしゃ)どの、()きておられるか」 ある(よる)…。 宿(やど)()まっているわしのところに、魔王(まおう)側近(そっきん)であるガーゴイルが()た。 (わず)かに(ひら)いていた(まど)()(はい)ってきたようだ。 「お(まえ)魔王(まおう)の…。何用(なによう)か?」 律儀(りちぎ)(まど)から(はい)ってきたことから、(たたか)いにきたわけではあるまい。 「勇者(ゆうしゃ)どの…あなたの天寿(てんじゅ)(ちか)づきつつあることを(しら)せに()た」 「…やはりそうであったか」  (せい)()(つかさど)るガーゴイルには、(ひと)動物(どうぶつ)寿命(じゅみょう)()(ちから)があるという。 …(おどろ)きはしなかった。 最近(さいきん)()()むことが(おお)い。 おそらく、(はい)(やまい)…。 「あと(いっ)(かげつ)。それがあなたの寿命(じゅみょう)だ。(てん)へと()(かえ)されるその(まえ)家族(かぞく)()ごすも()し、(こころ)(おだ)やかに天寿(てんじゅ)(まっと)うするも()し…(たたか)いに()()れる必要(ひつよう)などないのだ」 ガーゴイルが()うには、魔王(まおう)もわしの体調(たいちょう)(あん)じているとのことだった。 もう(たたか)うのを()め、戦士(せんし)ではなく(ひと)として()くようにとの(かんが)えだそうだ。 だが、わしは(くび)()った。 「一度(いちど)()いた(けん)(ふたた)()ったあの(とき)より…わしは家族(かぞく)(もと)には(もど)らぬと()めた。もはや()()きる(みち)は、魔王(まおう)打倒(だとう)のみ…」 わしがそう()うと、ガーゴイルは 「承知(しょうち)した。だが先程(さきほど)()ったとおり、あなたの寿命(じゅみょう)(いっ)(かげつ)…それまでに(かんが)えを()えてもよいとだけ()っておこう。…養生(ようじょう)されよ、勇者(ゆうしゃ)どの」 ガーゴイルは(まど)から()()って()った。 そしてわしは…(いっ)月後(かげつ)に、最期(さいご)(たたか)いに()かった。
/78ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加