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「ぐはっ…!やられた…見事なり、勇者よ…」
魔王はたおれた。
そして、同時にわしは膝をついた。
「…やっと、やっと…魔王をたおした…」
「勇者どのよ、あなたの勝ちだ。世界はあなたの力で平和になったのだ。安心して帰られよ」
ガーゴイルがわしにそう言った。
だがわしには分かっていた。
魔王が最期の攻撃を…わざと受けてくれたことに。
…あのような一撃でたおれる魔王ではない。
だが…魔王は己の誇りと身体に傷をつけても、わしを勝者としてくれたのだ。
今まで共に競い合った、一人の強敵として。
…わしが人生の全てを掛けて出た勝負は、けして無駄ではなかったのだ。
「すまない…有難う」
わしは強敵と、その側近のガーゴイルに礼を言うとそのままたおれた。
…息子よ。
身体を鍛え。
心を磨き。
友愛に生き。
信念に燃えよ。
不屈の信念は心の刃となり、魔王を討つ。
だが魔王も命ある者。
けしてその猛くも美しい命を奪うな。
そして可能であるならば…共に生きよ。
我が意志はお前に託す。
父の悲願、果たしておくれ…。
勇者ハロルド。強敵に看取られ…73歳で逝くーーー
ー魔王と勇者ー
ー勇者と魔王ー -完-
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