始まりの朝

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 4月の初旬、早朝はまだ少し肌寒くて、恵比寿駅のホームで電車を待つ間、首に巻いた薄手のストールだけでは風邪を引きそうだった。  家を出た時にスマホを忘れたことに気が付き、それを取りに帰ったら今度は手に持ったスプリングコートを玄関に忘れてきてしまい、時間に余裕はあっても、今からもう一度部屋に戻るのは正直面倒くさい。  転職したばかりの第一週目に新人がいきなり体調不良なんて事態は絶対に避けたいのに、なぜ自分はこうも迂闊なんだろうか。  電車を待ちながらスマホでウェザーアプリを開くと、日中の気温は18度を超えるようだった。  最近はずっと朝晩は寒く日中は暑い。一体何を着るのが正解なのか、服を選ぼうとする度に頭を悩ませている。  週末まではずっと天気は晴れのようで、とりあえず洗濯はそこでまとめてしようと考えているとホームに電車が滑り込み、慌ててスマホをトートバッグに閉まった。  人の流れに乗って車内に足を踏み入れると、少し間を置いて発着ベルが鳴り、私の後ろで扉が閉まる。  少し奥まで進んで目の前の吊革を掴み、窓の外を眺めた。
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