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 お店に入ると、老舗の店主が花と佐倉を出迎えた。 「お嬢様、お久しぶりです」 「お嬢様なんてやめて」 「何をおっしゃいます、由緒正しいお嬢様じゃありませんか」 「花ちゃんでいいのよ。ありがとう、白露宝、私のソウルフードなの」 「うれしいことを言って下さる」 佐倉が5箱入った紙袋を、花はポイントカードを受け取った。 「はい、お嬢様、また来てくださいね」 「わあ、もう5つもポイントがついてる、ありがとう」  車に戻って、早速ひと箱開けてみる。 「森さんも一緒に食べよう、佐倉も。あとは事務所のみんなと周りの人に」 花は一つつまむと運転席に箱を差し出し、あとは佐倉に渡した。パンプスを脱いで座席に横座りになり、佐倉に寄りかかった。 「ちょっと疲れた」 「永田町に着くまで、少しお休み下さい」 佐倉は慣れた様子で、手帳を確認しながら言う。花は佐倉の肩に頭を乗せて目を閉じた。あれ、(かす)かにベルガモットの香りがする、香水かな。大好きなアールグレイティーを飲んでいるような気持ち……  その肩に寄りかかるとすとんと眠りに落ちた。森が呟く。 「お嬢様、ここのところ辛そうだなあ。先代も身体は丈夫じゃなかったし。佐倉君、頼んだよ」 「……はい」 佐倉はいろいろ思案しながら、手帳に書きつけていく。ふたりが出会ってから、もう15年が経っていた。
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