憂虞

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『あなたは、私に隠し事をしている』 この一文から始まっていた。 『あなたは、私を騙しているの? それとも、私には、もう興味がないの? いずれにしても、今の私はあなたを疑うことしか出来なくなってしまった。 あんなに優しいあなたが、こんなにも気遣ってくれるあなたが、まさか、私を裏切っていたなんて、未だに信じられない。 真実だとしても、まだどこかで「違う」という言葉を求めてる。 でも、あなたには直接聞く勇気がないの。だから、この手帳に書き込むことにするわ』 裏切った? 僕が? 何をした? どんなに思い返しても、何一つ心当たりは見つからない。裏切るも何も、隠し事も一切ない。あるとすれば、今も妻を愛していることを全く表現できないでいることだ。 騙す? 興味がない? まさか! 有り得ない。 妻の語る「真実」というものを見つけるまでは、この手帳を手放すことは出来なくなった。
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