8 それは極上の

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「じゃ、ごゆっくりどうぞ」 そう言われて黒塗りの車が停まったのは 私の家の前だった。 「えっと…祝賀会って」 お兄さん達はニヤッと笑って 私を車の外に追い出すと扉を閉めた。 「あ、あのっ」 「ほら、待っているよ?」 お兄さん達の指示した方向を見て、 私は息が止まった。 「おめでとうって、たくさん、言ってやって」 助手席からそう言ってこちらに声をかけたのは、 理恵さんだった。 「あの…」 理恵さんは柔らかく微笑んだ。 「貴方たちの幸せを 月夜野家は心から願っています。 もちろん、主人も」 そう言って理恵さんは、運転手さんに行って、 と告げると、車は走り去って行った。 一人取り残された私は、 緊張のあまり、後ろを振り向くのが怖くなる。 「萌歌さん…?」 懐かしい声がした。
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