血祭りの手作り弁当

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血祭りの手作り弁当

 納品までフルスロットルで働いていたせいで、帰宅してからは泥のように眠った。そんな俺が目を覚ましたのは、23時過ぎのチャイム音が鳴る、少し前だった。 「こんばんは! 今日もお弁当持ってきました」  橋野メイは二日目も手に何か持ってきていたが、ビニール袋ではなかった。今日はランチクロスに包まれたものだ。 「……やっぱり受け取らなきゃダメ?」 「はい、ダメです」  にっこり、そしてきっぱりと言い切ったメイは、それを押し付けてきながら言った。 「毒なんか入れてないから大丈夫ですよ」 「べ、別にそんな心配してるわけじゃ……」  俺は少し嘘をついた。本当は昨日、鮭弁当を食べながら、一瞬だけ思った。まあ、すでに半分食べてしまっていたので早々に諦めたのだが。 「……昨日のお弁当、食べてくれました?」 「あ、う、うん……初対面の君から訳の分からない状況で貰ったものを食べるのもどうかなと思ったけど、弁当が勿体ないから。食べ物は粗末にしちゃいけないし」  本当は空腹の衝動に抗えなかっただけなのだが、別に間違ったことは言っていないので良しとする。 「……食べてくれたんですね……」  メイは何やら嬉しそうだ。なぜそんな顔をするのかが分からない。バイトとはいえ、見ず知らずのオッサンが弁当を食べたのか食べていないのかがそんなに気になることなのだろうか。雇い主に「報告しろ」とでも言われているのだろうか。……これは何が何でも、聞き出さないといけない。  俺はしらじらしく口を開いた。 「今日もこの弁当、受け取るよ。だから、誰に頼まれて来てるのか教えてくれない?」 「……内緒ですってば。それに景井さんが受け取ってくれなくても、ドアノブに提げていきますから、私」  ぬぬ、そうきたか。俺が次の策を考えていると、メイが「あの、」と声を掛けた。 「僭越(せんえつ)ながら、今日のお弁当は、その……私が作ってきたものなんです」
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