血祭りの手作り弁当

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「えっ……手作り? 君の?」  思わず声が大きくなってしまった。メイはそれを拒絶の意だと受け取ったらしく、顔を真っ赤にして俯いた。 「そうですよね、気持ち悪いですよね。どこの誰かもわからない人間が作ったものを突然渡されたら……」 「ち、違う! そういう意味じゃなくて。なんというか……いいのかな? こんなオジサンが手作り弁当もらっちゃって」  こんなに若くて可愛い子の手作り弁当を食べたなんて世間に知られたら、世の男どもに血祭りに上げられるに違いない。もう明日にでも俺、死ぬのかなと思っていると、メイが顔をパッと輝かせて言った。 「はい、召し上がってください! 買ったお弁当ばかりじゃやっぱり栄養が偏ってしまうな、と思って。もっと栄養バランスの整ったものを摂ってもらいたいし、あとはその、毎回どこかで買っていたらお金がかさむので……」  メイが恥ずかしそうに(うつむ)いた。さっきも思ったが、メイの肌白い頬がほのかに紅くなるのが可愛い。俺が思うに。  ──って、え? もしかして君のバイト代、俺の弁当代込みなの? 雇ったヤツ、誰かは知らねえが、その分くらい別で出してやれよ。  心の中でそうケチをつけた俺は、ためらいつつも訊ねた。 「ちなみに、バイト代って、いくら貰ってるの?」 「……え? そうですね……。それはもう、たくさん」  そうつぶやく彼女は、見ているこちらが温かくなるほど、ほっこりとした笑みを浮かべている。相当な高額バイトらしい。自分とは対極にいる、リッチな雇い主だ。かなり貰っているということは、長丁場の仕事だろうか。 「……いつまでここに来るの?」 「景井さんが『お腹いっぱい』になるまでです」  その答えにますます謎が深まる。俺が難しい顔をしているので、彼女が助け船を出してくれた。 「ヒント、欲しいですか?」 「え、くれるの?」 「……明日、持ってきますね」
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