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「捨てられたって、誰かが捨てるところを新山は見たのか?」職員室の椅子に座った先生はあごを上げた。
「あ、いえ、見てません」
「じゃあなぜ、捨てられたってわかるんだ?」
「か、片方なくなったからです」
「おまえの勘違いじゃないのか?」
僕はうつむいて唇をかんだ。やっぱり来るんじゃなかった。
「わかりません」
「心当たりを探してみろ、な」
そのとき電話が鳴った。
「先生忙しいからな」
担任の先生は電話をとった。
「はい、○○小学校です。はい? あ、わたくしですが。え? それはないと思います。少なくともわたくしは把握しておりません。え? ──あ、いや、ちょっと待ってください。いま話を聞き始めたばかりのところでして」
帰りかけた僕を先生が右手で激しく呼んだ。電話のやり取りを耳に挟んだ校長先生が奥のドアから出てきた。
「ええ、はい。しっかりと聞き取りをしまして──ええ、はい。もしもそれが本当なら、学校としても大きな問題として取り組まなければならないことだと──はい、わかりました。わざわざお電話ありがとうございました」
「どうしたんだね」
「この子が靴を片方、捨てられたと」
「電話はなんて?」
「この学校のイジメが父兄の間で問題になっていると。この子、新山といいますが、電話の方が昨日見かけて、片方裸足だったから声をかけたそうなんです。そしたら泣き出してしまって。イジメを学校で解決できないなら、後援会長をしている区議さん同伴の上教育委員会に乗り込むと」
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