第14話:竹矢山吹

3/3
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/102ページ
三  会場中が盛り上がる中、不安な表情を浮かべている人物が一人。その人物は称号的には世界で一番強く、決勝で戦うチームの要です。なのに、目の前で活躍する過去の自分を恐れているようでした。 「そんな顔すんなや……」  山吹はこう言って、彼の意識を上に向かせることしか出来ません。  竹矢山吹(ちくややまぶき)は、若いながらも教え方がとても上手でした。相手の良いところを探すのが上手いのです。鋭い観察眼を持っているので、裁縫技界からは「指導者」として将来を期待されていました。  山吹は三人姉弟の末っ子です。彼には双子の姉がいます。はちゃめちゃなのに頭がよくて足も早く、裁縫も裁縫技も出来たので、イイトコなしの彼は家の中ではくすぶっていました。  幼稚園に入ると、自分より小さく、おとなしく、明らかに下の存在の縁と出会いました。縁は彼の有り余った元気をぶつける対象になりました。それは小学校一年生まで続きましたが、月面が転校してきたことにより状況が変わりました。  それでも縁はおとなしいまま。そんな中、ある事件が起きました。  その事件がきっかけで縁は山吹たちの前から姿を消しました。その数年後、山吹は中学生になりました。裁縫技の全国大会出場校に入学し、優勝もしました。ですが、日本一の舞台に立てたのは、月面と紅馬、そして今は裁縫技をやめ、郵便局に務めているという後輩。山吹は補欠ですらなかったのです。応援席で後輩たちと応援する最中(さなか)、山吹は実感した、とインタビューで語っています。 「自分には才能がないから、死にものぐるいで努力をしなければならない」  中学卒業後、紅馬はロシアに留学、山吹と月面は県内の強豪高校へ進学しました。三人は高校三年生の秋に行われる縫戦祭に参加しようと約束を交わしました。  そんな三人の前に現れたのは、自分より上の存在になった縁……鶴城十束だったのです。 縫戦祭二十七日目 本戦第四試合 管理神:管理神の管理神ゼード 依頼:お直し数点 ゴッドタイフーン vs スリーガンマトライアングル 先鋒 ○ツナグvsカイト 中堅 ○縁vsシエル ゴッドタイフーンの勝利! 決勝進出!!
/102ページ

最初のコメントを投稿しよう!