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「ナツヒ、あそこ行ってみるか?」
「あそこ?」
「ほら、小さい頃皆で遊んだ沢。ザリガニ取りに行ったべ」
「ああ!ホタルの沢 !?」
「そそ。ホタルの沢」
ナツヒの脳裏に記憶がよみがえる。
小さい頃、従兄弟の兄ちゃんと幼馴染の静や静の妹、近所の子供たち10人くらいで遊んでいた沢だ。
「まだホタル出るの?」
「出るよ、数は減ったけどなぁ」
「へぇ・・・変わってないんだぁ」
黄色いワーゲンが山をくだる。
ナツヒの頬を撫でる冷たい風が、もっと冷たくなっていく。
脇道にワーゲンを停めた。
鬱蒼と茂った林がある。その山道を沢まで歩いて降りていくのだ。
ワーゲンから降りた静が後部座席から何かを引っ張り出してナツヒに渡した。
「そんな格好や風邪ひくわい。コレ着れや」
エンジ色のウインドブレーカーだ。
「ありがと」
ナツヒは静のウインドブレーカーに腕を通して、笑った。
「見て。腕が長くて鳥みたい」
静の腕が長いからか、ナツヒにはブカブカだ。両手をパタパタして鳥の真似をする。
「ナツヒも変わらんなぁ、そういうとこ」
静は目を細めて微笑んだ。
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