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「ねこまんまって、猫が食べてたの?」
「は?」
「だって"ねこ"まんまだよ?」
「さあ…何で急に?」
「アンタがねこまんまにしてるから」
「あー」
昼休み。ここは夏目高校の中庭端のベンチである。 この場所で昼食をとっているのが私、米川リナとその友人、黒瀬ミクである。ミクは同性の私からみても惚れ惚れするような美少女であり、文武両道。そして、──「今日はどこに出逢いがあるかな~?楽しみ。」──極度の猫好き、である。
私達は日々こうして猫を探し歩いている。"探す"とはいっても特定の猫を探している訳ではない。放課後や休日に適当な湯所をウロウロしてはその場所で過ごす野良猫や飼い猫などを愛でて回っている。ちなみに雨の日は学校近くの猫カフェで文字通りの招き猫である看板猫達を愛でている。出会った猫達は写真を取り出会った場所や時間帯、名前などを記録している。別に何がある訳でもない、ただの自己満足の行動なのだが顔見知り(と呼べるかはさておき)の猫達が増えるのは中々に楽しい。因みにこんな活動をしておきながら私達は2人共猫を飼っていない。私は昔は飼っていたが亡くなった時に辛くなるのが嫌で、 ミクは「過干渉し過ぎて猫にストレスになってしまうもしれない」との理由である。まあ私も色々な猫の特徴や良さを見て回れる今の過ごし方の方がミクには合っている気がする。
こうして私達は今日も猫探しの旅に出る。今日の行き先は川沿いの公園、人が多く集まる場所だからか猫も多い。ここでの顔見知りは4匹だが今日は
「おお?新入り君かな?」
今まで見ていない白と茶のブチ。体が小さめなのは仔猫なのかあまりエサにありつけていないのか。しかし私達は猫カフェのような場所以外では無闇にエサを与えないようにしている。私達は良くても猫が増えたり居着くことをあまり良く思われない場合もあるからだ。人間の都合で飼われ人間の都合で捨てられ野良になった猫達にはあまりにも理不尽だよなぁ、と思ったのだが──
「すみません!この辺りで猫、見てませんか?」
「猫?どんな猫だろう、何か模様とか特徴はある?」
「えっと、小さくて体に茶色のブチがある……」
「リナ、この子じゃないか?」
そこにいたのは先程の新入り君。
「あ、ミーちゃん!」
「やぁ、久しぶりだな、この子は君の猫かい?」
「そうなの!けど首輪を付ける前に窓から出ていっちゃって……」
「そうか、気を付けろよ」
「知り合い?」
「あぁ、前にこの公園で知り合ってな。近々猫を飼うと言っていたが…そうだ、この子の名前は?」
「まだ決まってないの…ミーちゃん、何か良い名前ない?」
「そうだな……」
考え込んで、しばし。
「よし、私達の名前なんてどうだ?」
「えっ」
「ミクとリナだから…そうだな、"ミナ"でどうだ。」
「可愛い!じゃあ今日からミナだね、よろしく、ミナ!」
私達が猫になったようだな。そう言って私が知る中で一番猫に似ている彼女は、笑った。
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