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2.じっちゃん。
「俺ね、じっちゃんが好きみたい…。ううん、みたいじゃなくて大好きなんです!」
会うなり突然叫んだサクラを見れば、顔を真っ赤にして『彼の方』のような漆黒の瞳を潤ませていた。
少しでも『人間』に近づける為に『彼の方』に似せたはずなのに。何故か、この子はどこも『彼の方』に似てはいない。
黒髪黒目。黒というより漆黒の瞳はワシを見つめ、ワシの言葉を待っている。どこをどう見ても完璧に『彼の方』の模造だ。誰が見ても『人間』だった頃の『彼の方』のはず、だ。
…なのに何故。いつからこんなにも離れてしまったのか?
そして、この思いは、いつからだったのか?
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
幻影を飛ばしてから一週間ほどたって、ようやく帰館したサクラは今までと違って緊張しているようだった。部屋に呼んでも入り口近くに佇んだまま動こうとしない。
「どうした?そんな所で。服を脱いでこちらに来なさい」
「…は、はい」
ベッドを指し示せば、観念したように服を脱ぐ。
あまり日に焼けてない白い肌が露になる。手を差し伸べれば、ゆっくり近付きワシを見上げはするが、手を取ろうとはしなかった。ただじっとワシを見ている。その瞳は不安に揺れ、今にも泣き出しそうだった。
(どうしたというのだ?いつもはもっと楽しそうなんだが…。何かあったか?)
「後ろを向きなさい」
「…はい」
ゆっくり後ろを向くサクラを、上から下までじっくり見る。傷一つない滑らかな、作られた時のままの体がそこにある。
(どこにも傷ついてはいない。なら、何を不安に思ってる?いや、顔色が少し悪いな、精神的なものか?)
そっと触れると、激しくサクラが飛び上がった。あまりの驚き方にこちらが驚いてしまった。
「あっ…!ご、ごめんなさい…っ」
「驚かせるつもりはなかったのだが、ワシの手は冷たかったか?」
「ち、違いますっ…。す、すみません…」
「……」
俯き小さく震えてるサクラを、後ろから抱き上げてベッドに寝かせる。
サクラは、頑なにワシと視線を合わせようとはしない。目を逸らし続けるサクラの顎をつかみこちらを向かせるも、瞳は固く閉じられたままだ。
「サクラ。…ワシを見なさい」
サクラは一度、大きく体を震わせたが、観念したようにゆるゆる瞼を上げた。
漆黒の瞳は潤んでいた。
「どうした?人間界で何かあったのか?」
「…あ、ありません。あ、いえ…。『勇者』の話を…」
「『勇者』か。やはり現れたか…で?」
「…あ、あの。まだ子供で…でも、えーと…王都に、その…連れて行くって噂があって…えーと……」
だんだん顔が赤くなり焦り出すサクラを見て、思わず苦笑がもれる。
見る方が早いとはわかっているが、サクラの言葉で報告を聞く事は思いのほかワシの楽しみでもあった。上手く伝えられず焦るサクラは見ていると、何故か温かい気持ちになるからだ。
「す、すいません!俺、説明が下手で…。えっと、その…詳しくは王都に行って確認を、その…」
「大丈夫だ。見させてもらうからな」
「…っ!」
サクラが小さく息を呑んだ。それに構わずベッドに腰掛ける。
顎に触れてた手を少しずつ下へと滑らせていく。きめ細かい肌はしっとりしていて手に吸い付いてくる。
本物にも劣らないその手触りを楽しみながら、ゆっくり触れていく。
胸から腹、腹から腰へ。丹念に確かめるように優しく触れていく。
「っ…んっ…」
声を押し殺し小さく震えるサクラの肌が、少しづつ色付いていく。どこを触っても震える様は何度見ても飽きない。
ワシにとっては楽しい事だが、サクラにとっては耐え難い事らしい。いつもサクラは、感じる事を恥じているようだった。感じてる自分を悟られないようにいつも耐えている。
そんな事は、無駄なのに…。
サクラのものが硬く立ち上がり始めると、とうとうサクラの瞳から涙が溢れた。
「…っう…ごめ、ごめんなさい…うぐっ…」
「…何を泣く?ワシに触られるのは嫌か?」
「っ!ちがっ…違う!…お、俺が…俺の体が、浅ましい…から…」
「ワシがそうなるよう作った。お前は悪くない。…泣くな」
涙を吸い取ると、サクラが強く目を瞑った。さらに流れた涙も全部吸い取る。
『彼の方』の様に甘いが、『彼の方』とは違った甘さがある。不思議だった。その違いは年々、サクラを抱くたびに感じる。
『彼の方』に近づけたのに遠くなる。不思議で可笑しかった。
(可笑しいのはワシの方かもしれんな…)
すっかり硬くなったものをゆるく握れば、サクラが嫌がるように首を振った。声を出すまいと自分の指を噛んでいる姿を見ながら、軽く扱けば呆気なく達した。手に吐き出されたものを舐めると、淡い独特のサクラの魔力を感じる。視線を感じ見下ろせば、荒く息をしたサクラが唖然とワシを見ていた。
「な、なんで…舐め…っ!」
「確認だ。魔力が弱まってるが、ちゃんと食事はしているのか?」
「し、してる…つもりだけど。なかなか沢山は食べられない…よ」
「…ふむ。ま、多少なら普通の食事でも賄えるが、やはり定期的な魔力の吸収が望ましいのだがな」
「…は、い…」
消え入るように返事をしたサクラは、ワシから目を逸らすと静かに泣きはじめる。
「どうしたんだ、本当に」
「なんでも…な、い…」
涙が流れ落ちる前に吸い取る。至近距離で見つめ合う。漆黒の瞳は相変わらず潤んでいた。いつも思うが、潤んだ漆黒が色んな光を反射して煌く様は本当に綺麗だと思う。
『彼の方』の瞳もこんな感じだったな、と懐かしく思う。
サクラがじっと見ている。その体から硬い魔力を感じた。
(いつもの事なのに、何をそんなに緊張しているのか…。理由を聞いても言いそうにないが、それが無駄だと分かってるだろうに…)
口付けて緩く魔力を送る。最初は抵抗を感じたが、舌を絡ませゆっくりと時間をかけて魔力を流すと、サクラの体から少しずつ緊張が解かれていく。
「…ふっ、ぁ…じっ…ちゃん…っ」
息継ぎの度に、サクラの口から甘い囁きがもれるのを耳にしながら、腰を撫ぜればゆっくりとサクラが足を開いていく。それを合図にそっと後ろに触れると、そこはまだ硬く受け入れる気配がなかった。だから、指で丁寧に皺を解すようにと少しずつ撫ぜながら魔力を流す。
「…ん……ふぁ…んっ」
サクラの体から力が抜けていき、ゆっくりと頑なだったそこが柔らかくなる。そっと指を入れれば、抵抗なく受け入れられた。傷つけないように丁寧に広げていく。
さほど時間をかけずにサクラはワシを受け入れてくれた。
繋がるそこから信じられないくらいの熱を感じる。それ以上に甘いサクラの魔力を感じながら、軽く眩暈がするこの酩酊感に身を任せる。
ワシは、このサクラだけの魔力を好んでいる。
自分の魔力で作ったからなのか、『彼の方』のような不思議な優しさや激しさではなく、サクラだけの癒しに近い独特な優しさを感じていた。。
サクラとの交わりは他の誰にもない安らぎと快楽がある。それこそ、他の誰でもないサクラだけの魔力だと思う。
ワシがサクラの魔力を感じ、サクラがワシの魔力を感じ新たな甘い魔力を放出するのを受け止め、ワシの中で新しい魔力としてまたサクラに流す。
それは永遠のようで一瞬のようで…一つに解け合うような、得も言われぬ至福の時のように感じる不思議な感覚だった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
人間界の動向を探るために生み出した。
『人間』らしくする為に『人間だった頃の彼の方』を見本にした。最初はただそれだけだった。
何年も人間界で過ごしたせいか、サクラは『人間』のような言動が増えていった。それでも、ワシが魔力で作った者だ。どんなに『人間』の様に振舞おうが本質は魔の者であるはずだった。なのに…。
『俺ね、じっちゃんが好きみたい…。ううん、みたいじゃなくて大好きなんです!』
驚いた。まるっきり『人間』のようではないか。笑い飛ばし納得させたら、それ以来何も言わなくなった。だから忘れていた。忘れようとしていた。なのに…。
「…っ、じっちゃ…ん……っ、んっ…あっ」
繋がった所からサクラの魔力が溢れてくる。それを受け止め自分の魔力を大量に混ぜながら流すと、サクラが仰け反り達した。吐き出されると同時に魔力が渦巻く。相変わらずの甘い魔力だ。それを全て受け止め垣間見る為に五感を合わせると、この五年間のサクラが感じられた。隅々まで見る。
ワシにとっては一瞬の、だが、サクラの『人間』としての大切な五年間。
(なるほど…。見せるのを嫌がるわけだな)
大小の事柄はあるが、つい一週間ほど前の食事は、サクラにはなかなかに堪えたらしい。
名残惜しく思いながらも、ゆっくりとサクラから出ると、余韻で息を荒くして目を瞑っていたサクラが慌てたように上半身を起こしワシを見た。
不安そうな顔だ。
「ふっ…なんだ?まだ足りないのか?」
「……い、いえ…」
怯えたように目を彷徨わせ、所在無く座るサクラの腕を取り自分の方に引っ張る。何の抵抗も無く胸に収まるサクラの体を抱きしめる。
魔族の者にはない、温かい日差しのような匂いがした。そういえば『彼の方』は森の香りだったな、と思う。
思えば、いつもワシはサクラと『彼の方』を比べている。それは確認のようで、何かを納得させるための作業のように感じている。
納得…?何の?
「……じっちゃん」
「なんだ?」
「…お、俺…」
「……」
サクラが抱きついてきた。その体が震えている。そっと背中を擦ればさらに震えだした。毛布をつかみサクラを包む。
「お前が食事をしやすいようにと、受け入れやすい体にしたんだが…。かえってお前には辛い思いをさせてしまったな。すまなかった」
「…ちがっ!…違うよっ…うぐっ…じっちゃんの、せいじゃ…ぅう」
ついに泣き出したサクラを抱きしめる。
いつからこんなに自分の中で大きくなっていたのか…。
いつの間にワシは、サクラをこんなにも…。
サクラが顔を上げる。止め処なく溢れる涙を拭うこともせず、まっすぐにワシを見ている。涙に揺れ動く漆黒が堪らなく綺麗で、ただただ見入ってしまった。そんなワシをしばらく見つめたのち、サクラは一度ぎゅっと目を瞑り大きな涙を流したあと、揺るぎのない瞳に強い意志を込めて口を開いた。
「…じっちゃん。お、俺を…『俺の心』を…消して、くださいっ」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ベッドに横たわり、静かに眠るサクラを見下ろす。
傍に腰掛け、顔にかかった髪にそっと触れれば、としっとりとしていて気持ちが良かった。
先ほどまでの泣き腫らした真っ赤な瞳と苦しげな表情は、今は閉じられた瞳が隠したかのように穏やだ。
それとは裏腹に、ワシは激しい動揺に打ちのめされていた。
先ほどのサクラの言葉が繰り返し浮かんでは消え、それを自分の中で処理する事が出来ないでいた。だから、じっくりと隅々まで、何一つ見逃さないように、より深くサクラを探るために強く意識を沈めながら、眠るサクラに触れた。
するとどうした事か、サクラは苦しんでいたのだ。
ワシに対する気持ちを抱えて、日々苦しい思いをしていたのだ。
(こんなワシに…どうしてサクラは…)
納得などしていなかったのだ。楽しそうに笑うその陰で、自分の気持ちを消し去りたいくらい苦しんでいた。
『彼の方』に近付くように。
『彼の方』に似せた。
ワシが作った。
ワシだけの者。
ただそれだけの存在。
ただそれだけだったはずなのに…。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「…ん…?」
サクラが目を擦りながら起き上がりワシを探す。そして真横で横たわるワシに気づいて激しく驚いた。自然と笑みが浮かぶ。
「やっと起きたか?久しぶりの魔力交換で疲れたか?」
「じ、じっちゃんっ…え?な、なんで横に…?」
「なんでも何も、お前が起きるのを待ってたのだがな」
体を起こし顔を近づけると、目を所在なさげに漂わせ、少しずつワシから遠ざかろうとする。無視して近付けば近付いただけどんどん後ずさり、ついにはベットから落ちそうになった。そこでようやく自分が全裸なのに気付いたようで、慌てて傍にあった枕を胸に掻き抱きながら、不安そうにワシを見上げてくる。
「なんだ?そんなにワシの傍は嫌か?」
「ま、まさか!嫌じゃないっ!…ない、けど…さぁ」
ちょっと拗ねた様にそう言うと、サクラは一気に耳まで赤くして枕に顔を埋めた。
その髪にそっと触れる。手に馴染む感触を楽しむように撫ぜると、サクラが枕から片目だけでワシを伺った。
「嫌じゃないならいい。ワシも王都に行くつもりだからな」
「…え?」
「『勇者』の可能性がある子供が近々行くのだろ?だからワシも確かめに行く」
「じっちゃんが、王都…に?」
「そうだ。もちろん、サクラ…お前も一緒にだぞ?」
「っ!!」
「まずは魔王様に報告をしてから行く事になるだろがな。だからサクラは、それまではこの家でゆっくりしていなさい」
「……」
「なんだ?嫌か?」
「…なんで、急に…そんな事を…?」
「…急に、か…。そうだな、お前にとっては急な事かもしれんな…。だが、ワシにとっては急ではなかったようでな、自分でも驚いておるよ」
「…?」
ワシの言葉をどう感じているのか。サクラが枕から顔を上げてワシをじっと見ている。ワシの感情を少しも見逃すまいと真っ直ぐに、ただひたすらにワシを見つめている。その瞳に不安を宿しながらも…ただひたすらに。
その瞬間、全てのものが消え去り、サクラの瞳に写るワシだけが残った。
--ああ、そういう事か。
これが、サクラが感じていた苦しみなのか…。
…こんなにも、もどかしく切ないものなのか。
手を伸ばしサクラを引き寄せる。何の抵抗も無くワシの胸に雪崩れ込んだサクラが、恐る恐るというようにワシを抱きしめるように腕を回してきた。
その温かい体温に、体の奥から得も言われぬ安堵感が湧き上がった。思わず小さく笑ったワシをサクラが見上げる。
「…じっちゃん。なんで、笑ってんの?」
そう言うサクラの顔も笑っていた。
「お前だって笑ってるぞ」
「ふふ。だって、じっちゃんが笑ってるんだもん」
「?ワシが笑うと、何故お前まで笑うんだ?」
「なんでって…。じっちゃんが笑ってるのを見てると嬉しくなるからだよ?だから、笑っちゃうんだよー」
そう言いながらサクラが明るく笑う。
--そうだ、これがサクラなんだ。
優しく笑うサクラに短く口付ける。驚くサクラに構わず、今度は深く深く口付けると、サクラがゆっくり口を開き甘い魔力を流してきた。遠慮がちに絡めてきた舌を引き寄せ、堪能しながら口内に魔力を流してやる。サクラの全身から力が抜けていくのを感じつつ離れれば、上気した顔のサクラと目が合った。
潤んだ漆黒は、その心の内を隠そうともしないでワシを見つめている。
この子は、こんなにも語っていたのだ。…いつも、ずっと。
「じっちゃん…」
「…すまんな、サクラ」
「…なにが?」
「…まだまだ、お前を自由にはしてやれん」
「…うん、わかってるよ。魔王様の為にも『勇者』の情報は必要だもんね?俺、頑張るよ!だって、今度はじっちゃんも…一緒なんだよね?」
「…あぁ、そうだ。一緒に行く」
「えへへ。初めてだね、一緒に人間界に行くの!
あ、あのね!俺一応、冒険者やってあっちこっち行ってるから、王都までも案内できる自信あるよ?」
「…そうか。なら、人間界に行ったら頼むぞ」
「うん!まかせて!俺ね、冒険者としては結構頑張ったから、狩りも得意なんだよ!道中は、じっちゃんにも美味しい物作ってあげれるよー」
嬉しそうに笑うサクラを抱きしめる。腕の中で、冒険者としての自分の経験を一生懸命、表情や手振りで話すサクラを見つめる。全てを知っていても、サクラの言葉で聞くとワシの心は浮き足立つ。自然と顔が緩み、ただただ楽しいという感情が全身に広がる。そして、ワシはようやく納得するのだ。。
それは、サクラが『サクラ』だからだ、と。
こんな簡単な事に、今まで気付かないでいたワシは、本当に愚かとしか言いようが無い。
『なんでって…。じっちゃんが笑ってるのを見てると嬉しくなるからだよ?だから、笑っちゃうんだよー』
あぁ、本当にそうだ。お前が笑うとこんなにもワシは嬉しいのだ。
ずっと、嬉しかったんだ。
サクラ、お前といる事が…こんなにも。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
抱きしめた温もりが、静かに呼吸するのを確かめベットから下りる。
自分から離れたくせに、温もりの無い腕が寂しく感じられて苦笑がもれた。見下ろせば、穏やかな顔で眠るサクラがいる。ずれた布団を肩まで引き上げ掛けなおせば、なにか寝言をもにょもにょ言っていたので笑ってしまった。そっと頬に触れればふにゃりと笑う。愛しさが込み上げてくる。
…いつの間に、ワシはこんなにも弱くなっていたのか。
初めて、サクラの記憶を消した。自分の醜い感情で。
サクラの決意に耐えられない…弱い自分を認められなくて。
自分から離れようとするサクラを、苦しいから消えたいと望むサクラを失うのが怖くて。
ここ最近、自分の寿命の終わりを感じていた。
それは自然の摂理で、いつ終わりが来てもいいように少しずつ準備はしていた。
魔王様の事と自分の役職の後任の管理。それだけが、自分の残された時間に費やす必要事項だと思っていた。
だが、ワシが作った、ワシに作られたサクラをこの世に残す事が気になった。ワシがいなくても一人で生きていけるように…開放しなければ、と。
ただその思いでいたのだが…。
今となっては、それも無理のようだ。
残り少ない時間の許せる限り、ワシはサクラといたいと願っている。
それがいかに自分勝手な醜い感情だとわかっていても…望んでしまった。
もし、それが叶うなら、サクラを作り出した、邪な、浅ましい、邪悪な、この身が少しは救われるかもしれない。
どこまでも自分勝手なわが身が、少し誇らしくなってきた。
「ふっ、老いぼれて朽ちていくだけの何者でもない者と思っておったが、ワシも魔族の端くれだったという事だな」
不思議と高揚する気持ちが嫌ではなく、むしろ楽しくなってくる。
「とりあえず、魔王様に『勇者』の事を報告して、王都に行く許可を得ねばな」
眠るサクラに、触れるだけの口付けをし魔王様に会う為に部屋を出た。
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