あれからの俺とじっちゃん。3

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あれからの俺とじっちゃん。3

「…んっ…あ、……じっ…ちゃん。…もう……んっ…」  まるで自分のものとは思えない鼻にかかった甘い声が、じっちゃんが動くたびに口から出ていく。  何故かじっちゃんは、結界を張ってないので、こんな壁の薄い宿屋では、俺の声が周りの部屋に聞こえているかも知れない。 「…ぁあっ…だ、ダメっ!…む、…むりっ…」 「…ふっ。何、が無理…なんだ?」 「…っ!」  じっちゃんの動きが速くなる。繋がった所から、痺れと熱が全身に走った。  あっという間に欲望が弾けたけど、吐き出すものなんかとっくになくて……。ただただ凄まじい快感だけが体中を支配する。  溺れたみたいに上手く息が出来なくて、はくはくしてるのに、じっちゃんが口を塞いできた。  逃げるつもりもないけど、すぐに絡みとられた舌とともに、口の中を優しく蹂躙される。  苦しいのに気持ちが良くて、自分の意思ではどうにもならない体は震えっぱなしだった。  自然と涙が流れる。 「…サクラ」  一度動きを止めて、名残惜しそうに唇を離したじっちゃんが、俺の涙を舐めとる。  ゾクゾクと背中が痺れた。 「すまんな。まだ、終われそうにない…」  苦しそうなじっちゃんに、大丈夫だと首を振って答えれば、じっちゃんが目を細め妖艶に微笑んだ。  それだけで、空っぽなはずの中心が何かを期待して、ゆるゆると立ち上がろうとする。 (じっちゃんも…凄いけど、俺もすご…いなぁ。これが、俺の意思なんて…)  じっちゃんがゆっくり動き出す。それに合わせるように、自分の体も揺れる。繋がった所から全身に伝わる、心地よい安らぎにも似た振動に、眠ってしまいそうだ。 「サクラ…」  耳元で囁かれ、かあっと体が熱くなる。遠くに行きかけていた波が再び戻り、体中を震わせた。  じっちゃんが呼ぶ俺の名前は、なんだか特別に感じる。  ーーまるで……大切な、宝物のように。  じっちゃんの動きが速くなる。つられるように俺の口から声が漏れていく。 「あっ…っ、…んっ…」  耳に届く自分の声が、かすれてる事に気が付いた。そういえば…と、体は自分の意思じゃ、もう動かせそうもないので、目だけで窓の外を見やると、夜が明け始めていた。  こんなに長い間、じっちゃんと繋がってたのは久しぶりだなぁ、と呑気に思う。  さっきまで、死ぬかもしれないって絶望してたはずなのに…。  なのに今は、じっちゃんと繋がって優しく揺らされてる。  なんだか不思議で、なんだか可笑しくて…くすりと笑えて。  どうしてこうなったのか考えようとして、俺は意識を手放した。  ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 「俺、死んじゃうんだよーっ!」  叫んだ俺に驚いてたじっちゃんだったけど、すぐに我に返りすごい力で抱きしめてきた。そして、俺を落ち着かせるように優しく背中をさする。 「落ち着け。大丈夫だ。お前は死なない。ワシがいるんだぞ?だから、お前は死なないし、()()()()()()()」 「で、でも…俺、おかしいんだよ…。こ、こんな事、始めてで…。多分…壊れて…る。だ、だから…もう……」 「何をおかしいと感じた?何故、死ぬなどと思うのだ?…教えてくれ、サクラ」  じっちゃんが、両手でそっと俺の顔に触れ、上を向かせる。  真剣な、でも労るような優しい眼差しとぶつかる。涙が出てきた。 「お、俺…。死にたくないっ。じ、じっちゃんとまだ…一緒に、居たいんだよぉ……うぐっ」 「あぁ。ワシもだ。まだまだお前が足りない。だから、お前は死なせない。  ワシが作った、ワシだけのものだ。ワシが生きてる限り、サクラ…お前に死などは訪れない」 「……でも、俺…。体が、変…なんだよ?」 「何が、どう変なのだ?」  じっちゃんが優しく、髪を()いたり頬を撫ぜたりする。その間も、俺からは目を逸らさない。  だから、涙は一向に止まらなかったけど、気持は落ち着いてきていた。  ぎゅっと目を瞑ると、流れた涙をじっちゃんが丁寧に吸い取ってくれる。目を開けたら、じっちゃんが俺を見つめていた。たまらず、じっちゃんに抱きつく。 「…あ、あのね…」 『ネルゼン』に触られた時の、体験した事のない不快感と、最近のじっちゃんに対する体の変化を、出来るだけちゃんと伝わるように話した。  最初は凄く心配そうに、少しでも俺の気持ちに近付くようにと、真剣に聞いてくれていたはず…なんだけど。…けど!  今は…。 「ははっ、そうか、そうだったのか。ふはははっ」  見た事もないほどに大爆笑されてます。しかも、ちょっと涙目気味に…。  --それはそれは、楽しそうに、嬉しそうに…。 「じっちゃんっ!」 「いや、すまぬ。うん、うむ……ふっ、ははっ、ふはははっ」 「じっちゃんっっ!!」  半泣きな俺をよそに、じっちゃんはひたすら笑い続ける。  俺は、死ぬかもと怯えてたのに。  そんな俺をじっちゃんが笑う。それってさ… 「…じっちゃんは、俺が、死んでも…へ、平気なん、だね……うぐっ」 「…っ!」  じっちゃんが、笑うのを止めて俺を見た。 「…俺、体が変で、こ、怖くて…。死ぬかも、し、しれないのに…。じっちゃんにとっては、笑っちゃう、く、くらい…どうでも、いいん…だね……ぐすっ」  また、涙が溢れてくる。  何故こんなに泣けるのか。  悲しいからか、悔しいからか、寂しいからか…。  ーーやっぱり、()()()()()()からなのか…。 「……サクラ。おいで」  じっちゃんがベッドに腰掛け、自分の隣を軽く手で叩いた。  そして、泣き続けながら部屋の隅で立ってる俺に、 「悪かった。ちゃんと説明するから、ここに来なさい」  と、手を差し伸べてきた。  その手をじっと見る。人間の姿に変化(へんげ)しても、変わらない大きな手。ゆっくり歩いて近付き、その手に触れる。温かい手だ。  触れただけの俺の手を、じっちゃんがぎゅっと握った。じっちゃんの顔を見る。  今は色の違う瞳だけど、俺を見る優しい眼差しは変わらない。  俺が作られて、初めてじっちゃんを見た時から、ずっと。  隣に座ると、握られてない手も、もう一方の手に握られ、両手でしっかり包み込むように、じっちゃんが俺の手を握った。 「サクラ」  優しく名前を呼ばれ、ますます涙が溢れてくる。そんな俺に向き合って、じっちゃんが小さく笑った。 「お前は死なない。そして、一人()()では死ねないぞ?」 「……え?な、なんで?」 「お前が死ぬ時は、絶対ワシも一緒だからだ」 「…………………へ?」 「お前と命を()()()。一緒に死ねるように、な」 「………………………………………………なっ!な、ななっ、何それぇーーーーーっっっっ!?!?!?」  俺の絶叫が、狭い部屋に響き渡った。しばらくすると、両脇の部屋から壁が叩かれる。はい。うるさかったですよね?わかってます!だけど、こっちはそれどころじゃないんですよーっ! 「じ、じっちゃんっ。命を『繋いだ』って…なんで?どうして??一体いつ???」 「サクラと一緒に居るために。どちらかだけ残されるのも嫌だからな。だから、コウに助けられた後、すぐに繋いだのだ」  慌てまくる俺の問いかけに、律儀に答えてくれるじっちゃん。うん、嬉しいんですけど、何が何やら…。 「その時にな、サクラ。お前の体も、元に戻した(・・・・・)のだ。本来の気持ちに()うように…もとの形に、な」 「…俺の…体?」  本来の気持ちに添う?もとの形?どういう事? 「食事(精の吸収)をしやすいように、お前の意思を曲げてでも、受け入れやすくしていた体を、本来の、お前の心が感じるままに(・・・・・・)反応するように。  言わば、今のお前は、手を加えてない、『生まれたままの本当のサクラ』だという事だ」 「…そ、それって。…じゃあ、さっきのあの不快感って……」 「ふむ。お前の心が拒絶していたせいだろうな」 「……ッ!」  確かに、人前や特にじっちゃんの前で『ネルゼン』に触られるのは嫌だって思ったけど…。  あんなにも、気持ち悪くなるものなの? 「ふっ。お前は殊の外、素直(・・)な性格のようだからな…」  考えてる事が顔に出たのか、じっちゃんが笑いながら話す。  しかも、一度笑い出すと、先ほどのものがぶり返したかのように笑い続けた。ただ、今度は大爆笑ではなく、少し顔を背け肩を小刻みに揺らして…だけど。  どっちにしろ、笑われてる事には変わらないわけで………。  なんだか悔しくて、じっちゃんを睨みつけてやる。…泣きながらだから、迫力なんてないかも知れないけどさ。 「その顔は逆効果だぞ?ワシを喜ばせるだけだからな」 「………え?」  意味が分からなくて、一瞬呆けていたら、じっちゃんが触れるだけのキスをしてきた。びっくりして涙が止まってしまった。  じっちゃんは、触れるだけのキスを何度かした後、最後に、深い深いキスをしてきた。一瞬で意識が持っていかれる。  それまでの、啄むようなキスで緩んでいた唇の隙間から、じっちゃんの舌が遠慮なく入ってきて、俺の舌に絡んだ。  ざらりとした舌は相変わらず甘くて、すぐに腰に熱が貯まるのが分かる。  じっちゃんが喉で笑って、唇を離した。 「…本当に素直だな、お前は」 「……だって…」  自分でも、簡単だなぁとは思うけどさぁ。じっちゃんに触れられると、どうしても…。 「だから、楽しくなって…つい笑ってしまったんだ。不安にさせて悪かった」 「……楽し、く?」 「あぁ。あまりにも素直に…真っ直ぐにワシに対して気持ちを表すのでな。お前らしいというか…」  そう言って、じっちゃんは目を細め微笑んだ。本当に楽しそうに。  確かに、じっちゃんへの気持ちを隠す必要がなくなって、嬉しくて浮かれてたのは認めるけどさぁ…。  気持ちがダダ漏れって…恥ずかし…い…………って、………ん?  ーーーーーーーあれ?  そういえば、じっちゃんは『俺の心と体を繋いだ』って言ってなかったっけ?  って事は…今の俺は、心で感じる事が体に反映してるって事だよね?  って事は…最近のじっちゃんに対する不可解な体感って、全部俺の気持ちから来てるって事だよね?  ーーーーーーーあれ?  じっちゃんが近付くと、異常に体が熱くなったり、我慢できなくなったり、心臓が暴れて息が苦しくなったり……。  それが、いつもの作られたスイッチじゃなく、俺の気持ちから来てるものだとしたら………………?  も、もしかして…俺って、俺が思ってる以上に…。 『じっちゃんが好き!』って事になるんじゃないのか?これは!?  慌ててじっちゃんの顔を見る。じっちゃんは…慈愛に満ちた優しい眼差しで俺を見つめていた。  途端、全身が沸騰して、心臓が暴れだした。何だか、体も震える。 「ふっ。…そういうお前を見ていると、とても良い気分になるのだよ、サクラ」 「じ、じっちゃ…ん…っ!」 「お前への気持ちを自覚してから、ワシは毎日が楽しい。  特に、人間に変化(へんげ)したせいで、人間の気持ちに引っ張られているのか、旅に出てから、ますますお前の気持ちが手に取るように分かってな。本当に楽しくて仕方がないのだ」 「あ、あぅ…」 「素直に反応するお前も、可愛くて愛しくて…つい、笑ってしまう」 「…はわっ…」 「せっかく人間に変化(へんげ)したからと、人間のように交わってみたが、それも存外良かった」 「…………ひっ、ひぇ~……」 「サクラ」 「ひゃ…っ、ひゃいっ!」  もう、いっぱいいっぱいで…。何が何だか…どうしていいのか分からなくて…。  馬鹿みたいに泣き続けるしかなかった俺を、じっちゃんがゆっくりとベッドに寝かせた。  何度も何度も、涙を吸い取り舐めとり、顔中キスしまくり、髪を梳いたり、頬を撫ぜたり…。  まるで、俺をあやすように優しく触れながら、じっちゃんは俺の服を脱がせていった。  ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ぐうぅぅ~~ごぅおぅ~~ (…………ん?)  ごごっ~~ぐうぅぅうぅ~~ごっ (な、なんの音?…これ?)  不気味な音に目が覚め、辺りを見渡せば、すぐ近くでベッドに腰掛けてたじっちゃんが、俺を見下ろし笑っていた。 「…じっちゃん」 「ようやく起きたな。ワシを置いて先に寝てしまうとはな…驚いたぞ。体は大丈夫なのか?」 「…え…?先に寝たって…?」  慌てて起き上がると腰に鈍痛が走った。そういえば朝までじっちゃんと……。  ごぁあっ~~ぐるるるっー  ん?また、あの不気味な音だ。だけど、なぜか俺の近くから聞こえ…って、まさかっ!  思わず起き上がり、自分のお腹に触れる。  きゅるるる~っ、ぐおぉ~~ん  触れた手に直接伝わる振動。これは、紛れもなく……。 「……う、嘘!…この音って…。俺のお腹の音だったのかぁーっ!?」 「ふっ。昨日の夜から何も食べてなかったからな。起きられるなら、そろそろここを出て、外で何か食べるとするか」  じっちゃんが、立ち上がって出る準備を始める。脱いであった俺の服も、いつの間にか丁寧に畳まれてあった。じっちゃんがそれを渡してくれる。 「ありがとう……って、待って!  俺、じっちゃんといっぱいシたよ?なんで、お腹が鳴るの?なんで、魔力が減ってるの?」 「当たり前だ。『魔力交換』を暫くしてなかったのだからな。お前は普通に腹が空いてるのだよ」 「えっ?俺、魔力もらってなかったの?い、いつから?」 「この旅を始めてからだ。人間に変化してからは、人間のように魔力を使わずに交わっておったのだからな。…まさか、気付いてなかったのか?」 「…………………………はい…」  じっちゃんの動きが止まった。いや、世界中の時間が止まったように感じた。それぐらい衝撃的な事実。 (お、俺…どんだけ浮かれてたんだよーっ!!)  じっちゃんの晴れやかな笑い声を、俺は、全身真っ赤にして小刻みに震えながら聞いていた。  ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  支度を済ませ、一階の受付に部屋の鍵を渡しに行くと、昨日じっちゃんに別の部屋を勧めてた、宿屋の店主がいた。寝てないのか、目が充血している。  鍵を返すと、店主が俺とじっちゃんを交互に見つめ、嫌な笑い方をしながら、じっちゃんに話し掛けた。 「旦那、そっちのご趣味(・・・・・・・)とは知らずに、夕べはとんだご迷惑をお掛けしました」  …ん?趣味って…なんの事?  思わずじっちゃんを見上げた。じっちゃんは、無表情のまま店主を見下ろしていた。…心なしか、空気が冷えてるような気がするけど。 「ウチの宿はご満足頂けたようで…。またのご利用の時は、別のご奉仕(・・・・・)をさせて頂きますので、よろしくお願い致します」 「二度と来んよ。お前のような浅ましい人間の居る所など」 「「えっ?」」  俺と店主の驚きが重なる。 「『ギルド』とやらで、薦められた宿だったが。客の様子を扉の外で、一晩中聞いておる、嫌らしくも浅ましい恥知らずな人間のいる宿になど、な」 「…ッ!」  畳みかけるような、じっちゃんの罵倒に、ざっと店主の顔から血の気が引いた。  対して俺の顔は真っ赤になってるはずだ。 (一晩中扉の外って…。じっちゃんとの事聞かれてたのか…うわぁ、恥ずかしい~) 「行くぞ」  じっちゃんが踵を返して歩き出す。慌てて俺も着いて行く。  後をチラッと見ると、店主はまだ顔を青くして唖然と俺達を見ていた。 「結界張ってくれれば良かったのに~」 「色々説明するより聞かせた方が、ワシらの関係が分かるだろうと思ったのだ。だが、まさか朝まで居るとは思わなかったわ」 「か、関係って…?」 「ワシらが『番』だと思い知ったはずだが」  かっと体が熱くなる。  ま、まただ。前から気になってたんだけどさ……。 「じ、じっちゃんっ! さ、最近、よく『番』って言うけどさぁ…意味分かって使ってるの?」 「? 一生涯共にいる者逹の事だろ?確か、人間的には『夫婦』…と言ったはずだが違ったか?」 「…っ!」  い、意味…分かって使ってたのか…。 「ワシらは人間ではないからな。『夫婦』より『番』の方がしっくりくる。  だか、もしかすると魔族達が使う『番』は、人間達には通じないのか?」 「だっ、大丈夫!他の種族…魔族以外の亜種族も『番』って言うからさ!」 「ならいいが」 「……う、うん」  いや、俺が言いたかったのは…俺とじっちゃんの関係だったんだけど。  じっちゃんの中でいつの間に俺達が、『作った者と作られた者』から『番』にまで昇格していたのか…。  全っ然!分からなかったんですけど??  最近、じっちゃんの行為が甘く感じたのって…そういう(・・・・)訳だったって事?…う~ん。なるほど、なるほど。納得です。 「サクラ?どうしたんだ?」  俯きながら歩く俺を不審に思ったのか、じっちゃんが歩くのを止めて俺の肩を掴んだ。だから、俺も自然と歩みを止める。 「サクラ?」  顎を掴まれ顔を上げさせられた。 「! どうした!?顔が真っ赤じゃないか?」 「は、はい。自覚しております…です」 「どこか辛いのか?やはり無理させてしまったのだな。よし、待ってろ。今すぐ回復魔法を…」 「わぁ~っ!待って待ってーっ!!大丈夫っ…大丈夫だからっ!これは、幸せを思いっきり自覚して、嬉しくて照れてるだけだから!回復魔法でも治らないからっ!」 「照れる?何を今更…」 「う、うん、そうっ!今更なんだけど…。やっと実感したっていうか…なんと言うか…はい」 「実感?何を?」 「………じ、じっちゃんと気持ちが通じ合ってるんだなぁ…って、さ」 「………」 「………だよね?」 「ふっ。確かに『今更』だな。それは」 「………………………………う、うん…」  たまらず、じっちゃんに抱きつく。じっちゃんは、やんわりと俺を抱き返してくれた。  それだけで、可笑しくて嬉しくて笑ってしまう。俺の頭上に軽く顎を乗せてたじっちゃんも、つられて笑ったのか、振動で頭がぶれた。だから、余計に可笑しくて声を出して笑ってしまった。  強く抱きしめると、同じ強さで返される。  ーー本当に今更だ。  だけど、今はそう思う事すらも、本当に幸せな事なんだと、改めて思い知ったのだ。
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