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嫌い。キライ。きらい。
嫌い。キライ。きらい。
この世界は「嫌い」で溢れている。
「あたしこの女優さんきらーい」
「私も私も!かわい子ぶっててイタイよね」
「それな」
「ねえ、三奈もそう思うでしょ」
「え、……」
集まる視線。
鋭い眼差し。
冷めきった目の奥。
それらは私に「肯定」以外の答えを許さない。
「うん!私も嫌い!」
そうだよ、嫌いだよ。取り繕って笑うことばかりが上手い自分も、嘘ばかり吐き出すこの口も声も。極めつけにはそんな自分が嫌いだといい子ぶるその思考回路さえ、気持ち悪くて反吐が出る。
嫌い。キライ。きらい。
「そんでさあ、そん時に隣のクラスの……、誰だっけ?」
「えー、足立?」
「ちがうちがう。ほら、テニス部の」
「ああ!安藤!!」
「そうそれそれ!そいつだよ!いじめはよくないとかって言って割り込んできやがって、いい子ちゃんぶっててキモイよな」
「うへえー、きっもお」
ああ、きもちわるい。
怪物のように長い爪も、馬鹿みたいにつけすぎた香水のにおいも。
全部全部気持ち悪い。
真っ赤な口紅を塗りたくった口裂け女みたいなデカい口が吐き出すのは自分よがりで、自分が正しいとまるで疑わない他者への批判ばかり。その言葉がどれほど自己中で、どれだけ醜いものかも知らずにペラペラペラペラと。本当に耳障りだ。
だからどうか止んでくれ。
人の形をした悪魔の戯言よ、どうか、どうか。その続きを言わないでくれ。
「だからさーあ」
やめてよ。お願いだからやめてよ。
「次のターゲット、あいつにしない?」
ああ、だからやめてくれって願ったのに。
思い通りにならない此奴らも、願いを聞き入れてくれない神様も。
みんなみんな大っ嫌いだ。
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