プロポーズ

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 和が何を話したのか。  羽依の両親は、彼女が和と交際していると思っているらしかった。 「羽依ちゃんももう16歳だものね。私たちも子離れしないと」 「吉川さんになら、羽依のことを任せられるよ」  自分が帰ってくるまでの間に何があったのか。  問いただしたい羽依だったが、両親も和も既に話が付いてしまっている様子で言い出せない。 「はい、羽依さん。これ、書いて」  差し出されたのは、婚姻届の用紙だった。  既に相手の欄には和の名前が書かれており、証人欄には羽依の両親の名前が入っている。 「あの」  色々言いたいことはあった。  拒否することも出来なくはなかった。  でも、にこにこと喜んでくれている両親を前にして場の空気を壊すようなことを羽依には出来なかったのだ。 「はい……」  結局、拒絶の言葉を口に出来なかった羽依は書類にサインをした。 「私たちが役所に出してこよう」 「そうね。2人はゆっくりしていて頂戴」  二人の名前が入った婚姻届を手に、三郷夫婦は出ていく。  残された羽衣は、和の顔もまともに見れずに俯くだけだった。
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