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「お母さん。お父さん宛に小包が届いた」
「ええ?」
開いてみると、どうやら父が買った品物のようだった。
斜掛けに銀縁の赤いリボンがかかった、片手に収まるくらいの黒い箱。開けてみると光沢のある緑色のコンパクトミラーが入っていた。
表面には白くレーザー加工でアラベスク調の蔦と花に蝶が綺麗にあしらわれていた。
そして、私の名前とメッセージがアルファベットで刻まれていた。
H.Yurina 20th Anniversary
「私の好きな色。知ってたんだ…」
はらりとカードが1枚落ちた。
泣き出した母の背中をさすりながら拾い上げてテーブルに置く。
お祝いに酒を一緒に飲もう
自分を主張する事もなく。何かを求める事もなく。母を。私を。家族を愛し続けてくれていた父。たくさんの想い出を残してくれた父。
「これからなのに…」
父の分も、母に恩返しをしよう。そして幸せになろう。
コンパクトミラーと母の背中を抱いて、私はやっと泣くことができた。
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