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ピンポーン
チャイムが鳴り、幼い私はトットットッと玄関へ向かった。するとドアがストッパーで開いたままになった玄関先に、雪だるまがいた。
ダッダッダッダッ
「お母さ~ん。雪だるまが来た!」
台所へ行き報告している所へ父が帰ってきた。
雪だるまに会わなかったかと聞くと、もう帰っちゃたのかな~と、あの父がとても会いたがっていたのを嬉しく感じた。
机の下にひと抱えほどの比較的新しいダンボール箱があった。
引っ張り出そうとすると大きさの割に重い。
体を潜り込ませて引っ張り出すとダンボールと中身は別物だった。
「え?見てお母さん!」
机の上を整理していた母が、涙を拭いダンボールの中を覗き込んだ。
「どうしてこんな物?」
不思議そうに見上げてくる母に、私は首を横に振った。
父はお酒もギャンブルもやらない人だった。
家では一滴も呑まないが、お酒の場にはよく呼ばれていた。それだけに割に合わない割り勘で遣り繰りも大変だったろうと思う。
そんな父の机の下にあったダンボールには、ほろ酔いになる程度の甘いカクテルの缶が数種類入っていた。
「呑んでたのかしら」
怪訝な顔の母に、別に悪い事でもないんだしと言ったものの、胸の隅に小さな靄が漂っていた。亡くなった親の秘密を知ってしまう話はよく聞くし、覚悟はしておこうと整理を再開した。
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